執筆:MIST工法®カビバスターズ本部(株式会社せら) 本記事の数値は公的機関の公開資料にもとづいています。
第22回は、天井裏を通っている配管とダクトです。ここは、結露する場所が決まっているという点で、他の部位と性格が違います。
冷たいものが空気にさらされていれば、その表面で水になります。配管とダクトは、まさにその条件を自分で持ち込んでいる存在です。
だから、保温材が巻かれています。その保温材が切れている場所、外れている場所、濡れている場所が、そのまま結露の場所になります。
この記事で分かること
- 天井裏を通っているものと、それぞれの温度
- なぜ保温材が巻かれているのか
- 保温材が切れやすい場所
- ダクトの中で起きること
- 点検口から見るときのポイント
1. 結論:冷たいものの表面で水になる
- 冷たいものの表面は、まわりの空気の露点を下回れば濡れます。これは第11回で見た内部結露と同じ理屈です
- 配管とダクトは、冷たさをその場所に持ち込みます。だから結露する場所が決まります
- 保温材は、その表面温度を空気から切り離すためにあります。切れれば、そこだけ露出します
| 天井裏を通るもの | 温度の傾向 | 結露の条件 |
|---|---|---|
| エアコンの冷媒管 | 冷房時は冷たい | 保温材が切れていれば結露する |
| エアコンのドレン管 | 結露水を排出する管 | 詰まると水が逆流する |
| 給水管 | 水道水の温度。夏は室温より低い | 保温材が切れていれば結露する |
| 給湯管 | 温かい | 結露はしにくいが、熱損失がある |
| 排水管 | 流れる水の温度による | 冷たい水が流れれば表面が冷える |
| 換気ダクト | 外気を運ぶ場合、外気温に近づく | 冬は冷たく、夏は湿った空気が通る |
| 電線・配線 | 発熱するが微小 | 結露の対象ではないが、濡れると危険 |
2. 保温材が切れやすい場所
| 場所 | なぜ切れるか | 起きること |
|---|---|---|
| 管の継ぎ目 | 接続部で保温材が途切れる | その部分だけ露出する |
| 曲がり(エルボ) | 曲面に巻きにくい | すき間が残る |
| 壁・天井の貫通部 | 穴を通すために外す | 貫通部の中で結露する |
| 吊り金具の部分 | 金具が保温材を貫く | 金具が冷える |
| 保温材の端部 | テープが剥がれる | 端から空気が入る |
| 後から追加した配管 | 既存と納まりが違う | 保温が不十分なことがある |
| 点検口のそば | 人が触れる場所 | 作業のときに外れることがある |
「点で濡れている」場合、その真上に何があるかを確かめてください。第2回で見た「水の跡の形」の考え方です。点なら配管、面なら結露、線なら伝った跡、という切り分けになります。
3. エアコンのドレン管
エアコンは、室内の空気を冷やすときに水を作ります。その水を外へ出すのがドレン管です。正常に働いていれば、屋外へ流れます。
| 起きること | 仕組み | サイン |
|---|---|---|
| ドレン管の詰まり | 埃、虫、藻類などで管が塞がる | 室内機から水が垂れる、天井にシミ |
| 勾配の不足 | 水が流れずに管の中に残る | 同上。ぽこぽこ音がする |
| ドレンパンの汚れ | 受け皿に汚れが溜まる | エアコンからのにおい |
| 管自体の結露 | 保温材が切れている | 管の下だけ濡れる |
| 屋外側の出口の詰まり | 出口が土や虫でふさがる | 室外の出口から水が出ない |
天井埋込型エアコンの場合
- 天井に埋め込まれたエアコンは、ドレン水を汲み上げるポンプを備えていることがあります
- ポンプが止まると、受け皿から溢れて天井裏へ流れます
- 天井にシミが出た場合、真上にエアコンがないかを確かめてください
- 分解・清掃は、メーカーまたは空調の事業者に依頼してください
4. 換気ダクトの中で起きること
24時間換気のダクトは、外気を取り入れたり、室内の空気を出したりします。ダクトの中を通る空気の温度と湿度は、外気に近づきます。
| 季節 | ダクトの中 | 起きやすいこと |
|---|---|---|
| 冬(給気ダクト) | 冷たい外気が通る | ダクトの表面が冷え、天井裏の空気が結露する |
| 冬(排気ダクト) | 暖かく湿った室内の空気が通る | ダクトの中で冷やされ、内側で結露する |
| 夏(給気ダクト) | 湿った外気が通る | 冷房した天井裏に近いと、ダクト表面で結露する |
| 通年 | 埃が溜まる | 結露水と埃が合わさると条件がそろう |
| 浴室・トイレの排気 | 湿った空気が通る | ダクトの内側に水がつく |
国土技術政策総合研究所の「省エネと結露」は、24時間換気の電源を切らないことを案内しています。止めると、湿った空気が室内にとどまります。換気の考え方については第27回で扱います。
用語のたしかめ
建築基準法施行令第20条の8は、住宅の居室について換気回数0.5回/時以上の機械換気設備等を求めています。24時間換気は、法令にもとづいて設けられているものです。
5. 点検口から見るときのポイント
| 見るところ | 見るもの | 記録 |
|---|---|---|
| 見える範囲の配管 | 保温材が連続しているか。継ぎ目のテープ | 写真。位置を書く |
| 配管の下の断熱材 | 色が違う、へこんでいる、湿っている | 範囲をメジャーで |
| ダクトの継ぎ目 | テープの剥がれ、たるみ | 写真 |
| ダクトのたるみ | 水が溜まる形になっていないか | 写真 |
| 天井面のシミの真上 | 何が通っているか | シミと配管の位置関係 |
| エアコンの真上 | ドレン管の勾配、受け皿 | 写真 |
天井裏には上がらないでください
- 天井は人の体重を支える構造ではありません。踏み抜きの危険があります
- 配線・配管に触れると、破損や感電の危険があります
- 点検口からのぞいて、懐中電灯で照らす範囲にとどめてください
- 濡れている配線が見えた場合は、その回路のブレーカーを落として、電気工事の事業者へ連絡してください
- 当社は医療機関ではありません。体調に関わる判断は、医療機関にご相談ください
6. 記録のしかた
| 記録すること | 書き方の例 |
|---|---|
| 日付と天気 | 2026年10月22日 晴/前日:晴 |
| 季節・運転状況 | 冷房を前日まで使用 |
| シミの位置 | 1階リビング天井、北東の隅から1.2m |
| 真上にあるもの | 2階の洗面所の給水管(推定) |
| 保温材の状態 | 継ぎ目のテープが剥がれている(写真①) |
| 範囲 | 濡れは直径15cmほど |
| 次にすること | 空調または水道の事業者に相談 |
7. よくある質問
Q. 天井のシミが、雨の日と関係なく出ます。
A. 配管を疑う材料になります。第2回で見た切り分けでは、季節や天気と関係なく同じ場所に出る場合、配管からの水を疑います。シミの真上に何が通っているか(浴室、洗面、トイレ、キッチン、エアコン)を確かめてください。
Q. エアコンから水が垂れてきました。
A. ドレン管の詰まり、勾配の不足、受け皿の汚れなどが考えられます。まず運転を止めて、水を受けてください。屋外のドレンの出口から水が出ているかも確かめてください。清掃・修理は、メーカーまたは空調の事業者に依頼してください。
Q. 保温材が切れているのを見つけました。自分で巻いてもよいですか。
A. 天井裏に上がる必要がある場合は、おすすめしません。踏み抜きと、配管・配線の破損の危険があります。また、保温材は材質と厚さが選ばれているため、代わりのもので巻くと想定どおりに働かないことがあります。写真を撮って、空調または水道の事業者に相談してください。
Q. 換気ダクトの掃除は必要ですか。
A. ダクトの中に埃が溜まると、結露水と合わさって条件がそろうことがあります。ただし、ダクトの清掃は専門の機材と作業が要ります。まずは室内側の給気口・排気口のフィルターの清掃から始めてください。取扱説明書に清掃の方法と頻度が書かれています。
Q. 24時間換気を止めたほうが、結露は減りますか。
A. 止めると、室内の水蒸気が外へ出にくくなります。国土技術政策総合研究所は、24時間換気の電源を切らないことを案内しています。また、建築基準法施行令第20条の8により、住宅の居室には換気回数0.5回/時以上の機械換気設備等が求められています。音や冷気が気になる場合は、止めるのではなく、給気口の位置や風量の調整を事業者に相談してください。
8. まとめ
- 配管とダクトは、冷たさをその場所に持ち込む。だから結露する場所が決まる
- 保温材が切れやすいのは、継ぎ目・曲がり・貫通部・吊り金具・端部
- 「点で濡れている」なら、真上に何があるかを確かめる
- エアコンのドレン管は詰まると逆流する。天井埋込型はポンプを備えることがある
- 換気ダクトの中は、季節によって冷え、内側で結露することがある
- 24時間換気の電源は切らない(国総研)。施行令20条の8は0.5回/時以上を求めている
- 天井裏には上がらない。点検口からのぞく
手に負えないカビは、お近くのカビバスターズへ
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連載「建物の構造とカビ ― 床下・壁の中・小屋裏」全31回
全体像(第1〜3回)
- 第1回(10/1)家のカビは見えている場所だけではない|床下・壁の中・小屋裏で起きていること
- 第2回(10/2)建物に水が来る4つの出所|雨・地面・室内・配管
- 第3回(10/3)家の断面で見るカビ|基礎から屋根まで、湿気が通る道
床下・基礎(第4〜10回)
- 第4回(10/4)床下のカビはなぜ起きるのか|地面からの水蒸気と床下の温度
- 第5回(10/5)床下換気の基準|施行令22条の換気孔と、ベタ基礎の考え方
- 第6回(10/6)防湿コンクリート・防湿フィルム|「地面を覆う」とは何をしていることか
- 第7回(10/7)床断熱と基礎断熱、カビ目線でどう違うか
- 第8回(10/8)床下の点検で何を見るか|におい・白い粉・土台の色・水の跡
- 第9回(10/9)床下調湿材・床下換気扇は効くのか|公的資料で確認できること
- 第10回(10/10)シロアリとカビ|同じ水分条件で起きる2つの被害
壁の中・外壁(第11〜18回)
- 第11回(10/11)壁の中で何が起きているのか|内部結露という現象
- 第12回(10/12)通気層の役割|壁の中の湿気を外へ出す仕組み
- 第13回(10/13)防湿層はなぜ室内側にあるのか
- 第14回(10/14)冬型結露と夏型結露|壁の中で逆向きに起きる
- 第15回(10/15)断熱材の種類とカビ|繊維系・発泡系で水分の振る舞いが違う
- 第16回(10/16)石膏ボードと壁紙|下地までカビが入るとき
- 第17回(10/17)外壁のひび割れ・シーリング|雨が壁の中に入る経路
- 第18回(10/18)サイディングとモルタル|外壁材で変わる水の逃げ方
小屋裏・屋根(第19〜22回)
- 第19回(10/19)小屋裏のカビ|なぜ夏と冬の両方で起きるのか
- 第20回(10/20)小屋裏換気の基準|方式で変わる換気孔の面積
- 第21回(10/21)屋根の雨漏りとカビ|「滴る」前に起きていること
- 第22回(10/22)天井裏の配管・ダクト|結露する場所が決まっている理由(この記事)
開口部・水まわり(第23〜27回)
- 第23回(10/23)窓まわりの結露が壁の中に入るとき|サッシ下部と窓台 (公開予定)
- 第24回(10/24)玄関・勝手口・土間|床のレベル差と冷える面 (公開予定)
- 第25回(10/25)浴室・ユニットバスの裏側|点検口から見えるもの (公開予定)
- 第26回(10/26)キッチン・洗面台の下|配管まわりの小さな漏れ (公開予定)
- 第27回(10/27)24時間換気と家全体の空気の流れ|負圧・正圧とカビ (公開予定)
点検と改修(第28〜31回)
- 第28回(10/28)見えない場所のカビを疑うサイン|におい・シミ・床鳴り・建具の動き (公開予定)
- 第29回(10/29)点検口はどこにあるか|自分で開けてよい場所・開けない場所 (公開予定)
- 第30回(10/30)調査で何が分かるか|含水率計・サーモグラフィ・ファイバースコープ (公開予定)
- 第31回(10/31)断熱改修・リフォームでカビを増やさないために (公開予定)
参考資料(一次情報)
- 国土技術政策総合研究所「木造住宅外皮の換気・通気計画ガイドライン(案)」 小屋裏換気孔の有効面積、外壁通気層15mm以上、床下換気孔300cm²/4m以内
- 国土技術政策総合研究所「省エネと結露」 夏型結露の定義、気密・換気・通気の役割分担、材料の熱伝導率
- 住宅金融支援機構【フラット35】在来木造の耐久性基準 基礎高さ40cm以上、防湿コンクリート6cm以上、防湿フィルム0.1mm以上
- 国土交通省「住宅の品質確保の促進等に関する法律の概要」 10年間の瑕疵担保責任の対象部分、住宅性能表示基準10分野33項目
- 文部科学省「カビ対策マニュアル」基礎編 水分活性Aw0.6以下、相対湿度60%以下、色素の除去は困難
- 厚生労働省「建築物環境衛生管理基準」 相対湿度40〜70%、温度18〜28℃
- 建築基準法施行令 第20条の8(換気設備) 住宅の居室について換気回数0.5回/時以上の機械換気設備等
