執筆:MIST工法®カビバスターズ本部(株式会社せら) 本記事の数値は公的機関の公開資料にもとづいています。
第26回は、シンク下と洗面台下です。扉を開ければ見える場所なのに、意外と見られていません。
ここで起きるのは、多くの場合小さな漏れです。ぽたぽた落ちるほどではなく、接続部がじわりと湿っている、という程度。だから気づかれず、続きます。
第2回で挙げた「水が来る4つの出所」のうち、配管にあたります。季節に関係なく同じ場所が濡れるのが特徴です。
この記事で分かること
- シンク下・洗面台下で水が出る場所
- 漏れと結露を切り分けるしるし
- 扉を開けて見る手順
- 床が柔らかくなる前に気づく方法
- 自分でできる範囲と、事業者に頼む範囲
1. 結論:季節に関係なく濡れるなら配管
| 出所 | どこ | 特徴 |
|---|---|---|
| 給水管の接続部 | 止水栓、分岐、ナットの部分 | 常に圧力がかかっている。じわりと濡れる |
| 給湯管の接続部 | 同上 | 温かい。漏れると湯気が出ることがある |
| 排水管の接続部 | シンク下のトラップ、床への差し込み部 | 水を流したときだけ漏れる |
| 排水トラップの封水 | 封水が切れるとにおいが上がる | 水漏れではなく、においのサイン |
| 食洗機・浄水器の分岐 | 後から付けた部分 | 接続部が増える |
| 配管の結露 | 夏、冷たい給水管の表面 | 季節で出る(第22回) |
| シンクのシール | シンクと天板の継ぎ目 | 上から水が回る |
- 季節に関係なく、同じ場所が濡れるなら、配管を疑います
- 夏だけ、管の表面全体が濡れるなら、結露を疑います
- 水を流したときだけ濡れるなら、排水側を疑います
2. 漏れと結露を切り分ける
| 手がかり | 漏れを疑う | 結露を疑う |
|---|---|---|
| 濡れる場所 | 接続部の一点から下へ | 管の表面全体 |
| 季節 | 関係なく続く | 夏に出る |
| 水を流したとき | 排水なら流したときに増える | 変わらない |
| 乾いた布で拭いたあと | 同じ場所にまた出る | 面全体にうっすら戻る |
| 水の量 | 溜まることがある | 滴る程度のことが多い |
| 床の状態 | 一点の下だけ変色・膨らみ | 広く湿る |
用語のたしかめ
紙を敷いて一晩置くと分かりやすくなります。キッチンペーパーや新聞紙を接続部の下に敷き、翌朝どこが濡れているかを見ます。一点だけ濡れていれば、その真上が出所の手がかりです。
3. 扉を開けて見る手順
| 手順 | すること | 見るもの |
|---|---|---|
| 1 | 中のものをすべて出す | 底板の色、におい、カビの点 |
| 2 | 懐中電灯で照らす | 奥の壁、床との取り合い |
| 3 | 乾いた布で配管を上から下へ拭く | 拭いたあとに濡れる場所 |
| 4 | 水を流す(20〜30秒) | 排水管の接続部に水が出るか |
| 5 | 紙を敷いて一晩置く | 翌朝、どこが濡れているか |
| 6 | 写真を撮る | 全体と、濡れた箇所の接写 |
| 7 | 底板を押してみる | 柔らかい、へこむ、しなる |
底板が柔らかい場合
- 底板が水分を含んでいます。強く押さないでください
- 範囲をメジャーで測り、写真を残してください
- 中のものを戻さず、扉を開けて乾かしてください
- 床下まで水が届いている場合、床下点検口から確認できることがあります(第8回)
- 水が出続けている場合は、止水栓を閉めて、水道の事業者に連絡してください
4. 収納の中で起きること
| 条件 | 起きること | 手のつけやすい対処 |
|---|---|---|
| 扉を閉めたまま | 空気が動かない | 定期的に開ける |
| 詰め込みすぎ | 奥が見えず、異変に気づかない | 底が見える程度に減らす |
| 段ボールを入れる | 湿気を含み、条件になる(第10回) | 段ボールは入れない |
| 調味料・食品を置く | 有機物。こぼれた汁も条件になる | 拭き取りとトレーの使用 |
| 底板に直置き | 面に接する時間が長い | すのこ・トレーで浮かせる |
| 配管の結露水が落ちる | 底板が湿り続ける | 保温材の状態を確認(第22回) |
| においがこもる | 封水切れ、または排水管の汚れ | 水を流して封水を戻す |
文部科学省のカビ対策マニュアルは、多くのカビが育つ条件として水分活性0.6以上を挙げ、相対湿度を温度変化にかかわらず常に60%以下に保つことを案内しています。シンク下に温湿度計を入れて、室内と比べてみてください。
5. 自分でできる範囲
| 状況 | 自分でできること | 事業者に頼むこと |
|---|---|---|
| じわりと濡れている | 拭く、紙を敷いて場所を特定する | 接続部の増し締め・部品交換 |
| ぽたぽた落ちている | 止水栓を閉める、受け皿を置く | 修理 |
| 水を流すと漏れる | 流すのを控える、受ける | 排水管の修理 |
| 夏だけ管が濡れる | 保温材の有無を見る、拭く | 保温材の施工 |
| 底板が変色している | 範囲を測る、乾かす | 底板の交換・原因の調査 |
| 床が柔らかい | 上に物を置かない | 床下地の調査・補修 |
| においが上がる | 水を流して封水を戻す | 排水管の点検 |
| 止水栓の場所 | 見え方 |
|---|---|
| キッチン | シンク下の奥。給水・給湯の2つあることが多い |
| 洗面台 | 洗面台下の奥。同じく2つあることが多い |
| トイレ | 便器の横または後ろ |
| 家全体 | 屋外の量水器(メーター)のボックスの中 |
止水栓の場所は、水が出ていないときに確かめておいてください。いざというときに探すのは大変です。写真を撮って、家族で共有しておくと役立ちます。
6. 洗濯機まわりも同じ構造
洗濯機の給水と排水も、接続部が集まる場所です。洗濯機を動かさないと見えないため、さらに気づきにくくなります。
| 場所 | 起きること | 見るところ |
|---|---|---|
| 給水ホースの接続部 | ナットのゆるみ、パッキンの劣化 | 蛇口との接続部、洗濯機側 |
| 排水ホースと排水口 | ホースが抜ける、差し込みが浅い | 排水口のまわり |
| 防水パン | 水が溜まる、排水口が詰まる | パンの中の水、髪の毛や糸くず |
| 防水パンがない場合 | 床に直接。漏れると下地へ | 洗濯機の下の床 |
| 洗濯機のドア(ドラム式) | パッキンに水が残る | ゴムパッキンの内側 |
| 壁の水栓ボックス | 壁の中の配管 | ボックスのまわりの壁 |
洗濯機を使わないときに
- 蛇口を閉める習慣があると、給水側からの漏れの被害を抑えられます
- ドラム式は、使ったあとにドアを少し開けておくと、内部の水分が抜けやすくなります(機種の説明書に従ってください)
- 防水パンの中は、定期的に掃除してください。埃と糸くずが排水口をふさぎます
- 長期の不在の前は、蛇口を閉めてください
7. よくある質問
Q. シンク下がカビ臭いのですが、水漏れは見当たりません。
A. 封水切れ(排水トラップの水がなくなり、下水のにおいが上がる状態)の可能性があります。しばらく使っていない排水口は、封水が蒸発します。水を流して封水を戻してみてください。それでも続く場合は、配管の接続部のすき間や、収納の中の湿気を疑います。温湿度計を入れて、室内と比べてみてください。
Q. 接続部のナットを自分で締めてもよいですか。
A. 締めすぎると部品を傷めることがあり、かえって漏れが増えることがあります。また、樹脂の部品は割れることがあります。位置と状態を写真に撮って、水道の事業者に相談するほうが手堅い進めかたです。まずは止水栓を閉めて、被害を止めてください。
Q. 洗面台の下の床が黒くなっています。
A. 水分が続いた跡です。範囲をメジャーで測り、写真を残してください。押して柔らかい場合は、下地まで進んでいる可能性があります。出所(給水・給湯・排水・結露)の切り分けに、紙を敷く方法が使えます。原因が止まらないうちに表面だけ直しても、同じ状態に戻ります。
Q. 食洗機を後付けしたあとから漏れるようになりました。
A. 分岐を追加すると、接続部が増えます。増えた接続部が出所になっていることがあります。設置した事業者に、接続部の確認を依頼してください。保証期間内であれば、その扱いも確かめてください。
Q. 床下まで水が回っているか、どうすれば分かりますか。
A. 床下点検口から、該当する位置の真下を見る方法があります(第8回)。点で濡れている、白い粉が出ている、木部が変色している、といった跡が手がかりになります。範囲が分からない場合は、含水率計やサーモグラフィによる調査(第30回)で絞る方法があります。
8. まとめ
- シンク下・洗面台下の漏れは小さく、気づかれずに続くことが多い
- 季節に関係なく同じ場所が濡れるなら配管、夏に管の表面全体なら結露
- 紙を敷いて一晩置くと、出所の位置が絞れる
- 中のものを出し、乾いた布で上から下へ拭き、水を流して確かめる
- 底板が柔らかい場合は、範囲を測り、扉を開けて乾かす
- 止水栓の場所は、水が出ていないときに確かめておく
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連載「建物の構造とカビ ― 床下・壁の中・小屋裏」全31回
全体像(第1〜3回)
- 第1回(10/1)家のカビは見えている場所だけではない|床下・壁の中・小屋裏で起きていること
- 第2回(10/2)建物に水が来る4つの出所|雨・地面・室内・配管
- 第3回(10/3)家の断面で見るカビ|基礎から屋根まで、湿気が通る道
床下・基礎(第4〜10回)
- 第4回(10/4)床下のカビはなぜ起きるのか|地面からの水蒸気と床下の温度
- 第5回(10/5)床下換気の基準|施行令22条の換気孔と、ベタ基礎の考え方
- 第6回(10/6)防湿コンクリート・防湿フィルム|「地面を覆う」とは何をしていることか
- 第7回(10/7)床断熱と基礎断熱、カビ目線でどう違うか
- 第8回(10/8)床下の点検で何を見るか|におい・白い粉・土台の色・水の跡
- 第9回(10/9)床下調湿材・床下換気扇は効くのか|公的資料で確認できること
- 第10回(10/10)シロアリとカビ|同じ水分条件で起きる2つの被害
壁の中・外壁(第11〜18回)
- 第11回(10/11)壁の中で何が起きているのか|内部結露という現象
- 第12回(10/12)通気層の役割|壁の中の湿気を外へ出す仕組み
- 第13回(10/13)防湿層はなぜ室内側にあるのか
- 第14回(10/14)冬型結露と夏型結露|壁の中で逆向きに起きる
- 第15回(10/15)断熱材の種類とカビ|繊維系・発泡系で水分の振る舞いが違う
- 第16回(10/16)石膏ボードと壁紙|下地までカビが入るとき
- 第17回(10/17)外壁のひび割れ・シーリング|雨が壁の中に入る経路
- 第18回(10/18)サイディングとモルタル|外壁材で変わる水の逃げ方
小屋裏・屋根(第19〜22回)
- 第19回(10/19)小屋裏のカビ|なぜ夏と冬の両方で起きるのか
- 第20回(10/20)小屋裏換気の基準|方式で変わる換気孔の面積
- 第21回(10/21)屋根の雨漏りとカビ|「滴る」前に起きていること
- 第22回(10/22)天井裏の配管・ダクト|結露する場所が決まっている理由
開口部・水まわり(第23〜27回)
- 第23回(10/23)窓まわりの結露が壁の中に入るとき|サッシ下部と窓台
- 第24回(10/24)玄関・勝手口・土間|床のレベル差と冷える面
- 第25回(10/25)浴室・ユニットバスの裏側|点検口から見えるもの
- 第26回(10/26)キッチン・洗面台の下|配管まわりの小さな漏れ(この記事)
- 第27回(10/27)24時間換気と家全体の空気の流れ|負圧・正圧とカビ (公開予定)
点検と改修(第28〜31回)
- 第28回(10/28)見えない場所のカビを疑うサイン|におい・シミ・床鳴り・建具の動き (公開予定)
- 第29回(10/29)点検口はどこにあるか|自分で開けてよい場所・開けない場所 (公開予定)
- 第30回(10/30)調査で何が分かるか|含水率計・サーモグラフィ・ファイバースコープ (公開予定)
- 第31回(10/31)断熱改修・リフォームでカビを増やさないために (公開予定)
参考資料(一次情報)
- 国土技術政策総合研究所「木造住宅外皮の換気・通気計画ガイドライン(案)」 小屋裏換気孔の有効面積、外壁通気層15mm以上、床下換気孔300cm²/4m以内
- 国土技術政策総合研究所「省エネと結露」 夏型結露の定義、気密・換気・通気の役割分担、材料の熱伝導率
- 住宅金融支援機構【フラット35】在来木造の耐久性基準 基礎高さ40cm以上、防湿コンクリート6cm以上、防湿フィルム0.1mm以上
- 国土交通省「住宅の品質確保の促進等に関する法律の概要」 10年間の瑕疵担保責任の対象部分、住宅性能表示基準10分野33項目
- 文部科学省「カビ対策マニュアル」基礎編 水分活性Aw0.6以下、相対湿度60%以下、色素の除去は困難
- 厚生労働省「建築物環境衛生管理基準」 相対湿度40〜70%、温度18〜28℃
