執筆:MIST工法®カビバスターズ本部(株式会社せら) 本記事の数値は公的機関の公開資料にもとづいています。
第23回からは、開口部と水まわりです。まずは窓。家のなかで、いちばん結露が目に見える場所です。
見えるぶん、拭けば済むと考えがちです。ただし、拭ききれなかった水はサッシの下部に溜まり、窓台へ回り、壁の中へ入ります。
この記事では、窓の結露が「見える結露」で終わる場合と、壁の中へ進む場合の違いを整理します。
この記事で分かること
- なぜ窓が家のなかでいちばん冷えるのか
- サッシの材質で結露の出かたが変わる理由
- 窓の結露が壁の中へ入る経路
- 窓台・カーテン・家具との関係
- 内窓を入れるときに気をつけること
1. 結論:窓は家のなかでいちばん冷える
国土技術政策総合研究所の資料によれば、材料の熱伝導率[W/(m・K)]は次のとおりです。値が大きいほど熱を通しやすいという意味です。
| 材料 | 熱伝導率[W/(m・K)] |
|---|---|
| アルミ | 200 |
| ガラス | 1 |
| PVC(樹脂) | 0.17 |
| 木材(ヒノキ・スギ) | 0.12 |
| 空気 | 0.0241 |
| アルゴン | 0.0164 |
- アルミはガラスの200倍、樹脂の1,000倍以上、熱を通します。アルミサッシの枠が冷たくなるのはこのためです
- 空気とアルゴンは熱を通しにくい。複層ガラスの中に封じられているのはこの2つです
- 窓は薄く、外に接しています。壁のように断熱材を厚く入れられません
2. どこに水がつくか
| 場所 | 起きること | 進むと |
|---|---|---|
| ガラスの面 | 面全体または下部に水滴 | 下へ流れて框に溜まる |
| サッシの枠(縦・上) | 枠の表面に水滴 | 下へ流れる |
| 下框(したがまち) | 流れた水が溜まる | 溜まったまま乾かない |
| レール・溝 | 水が溜まる。埃と混ざる | カビが育つ条件がそろう |
| 窓台(まどだい) | 框からあふれた水が乗る | 木部が湿る。塗装が浮く |
| 窓台の下の壁 | 窓台から伝って壁面へ | 壁紙にシミ、下地が湿る(第16回) |
| 壁の中 | 窓台の裏から層へ入る | 断熱材が湿る(第15回) |
「拭いて終わり」でよいのは、下框より上で止まっている場合です。窓台が濡れている、窓台の下の壁にシミがある、という段階になると、壁の中を疑う材料になります。
3. サッシの材質と結露
| サッシの種類 | 枠の材質 | 結露の出かたの傾向 |
|---|---|---|
| アルミサッシ | アルミ(熱伝導率200) | 枠が冷えやすく、枠での結露が出やすい |
| アルミ樹脂複合サッシ | 屋外側アルミ、室内側樹脂 | アルミ単体より室内側の枠が冷えにくい |
| 樹脂サッシ | 樹脂(熱伝導率0.17) | 枠が冷えにくい |
| 木製サッシ | 木(熱伝導率0.12) | 枠が冷えにくい。木部の管理が要る |
| 単板ガラス | ガラス1枚 | ガラス面での結露が出やすい |
| 複層ガラス | 2枚のあいだに空気またはアルゴン | ガラス面の温度が上がる |
用語のたしかめ
枠とガラスは別々に考えてください。複層ガラスに替えても、枠がアルミのままなら枠での結露は残ることがあります。逆に、枠が樹脂でもガラスが単板なら、ガラス面で結露します。
4. 窓台・カーテン・家具
| もの | 起きること | 対処の考え方 |
|---|---|---|
| 木の窓台 | 水が乗ると木部が吸う。塗装が浮く | 水を溜めない。拭き取りの習慣 |
| カーテン | 窓面に密着すると空気が動かない | 少し離す。朝は開ける |
| 厚手のドレープ | 窓との間に冷たい空気が溜まる | 夜は閉め、朝は開ける |
| 家具を窓際に置く | 空気が動かず、面の温度が下がる | 壁・窓から数cm離す |
| 観葉植物 | 土から水蒸気が出る | 数と位置を考える |
| 窓際の結露吸水テープ | 水を吸うが、吸ったまま乾かないことがある | 定期的に交換する |
| 断熱シート(ガラス貼り) | ガラス面の温度は上がるが、枠は変わらない | 枠の結露は残ることがある |
結露を拭く習慣と、その限界
- 朝のうちに下框とレールまで拭くと、溜まった水が乾かない状態を避けられます
- 拭いても毎日同じ量が出る場合は、室内の水蒸気量か、窓の性能か、換気の問題です
- 厚生労働省の建築物環境衛生管理基準は相対湿度40〜70%、文部科学省のカビ対策マニュアルは常に60%以下を案内しています。湿度計を窓の近くに置いて記録してください
- 当社は医療機関ではありません。体調に関わる判断は、医療機関にご相談ください
5. 壁の中へ入る経路
| 経路 | 起きること | 気づきかた |
|---|---|---|
| 窓台の表面から | 塗装の隙間から木部へしみる | 窓台の変色、塗装の浮き |
| 窓台と壁の取り合い | コーキングの切れ目から入る | 取り合いに沿った黒い線 |
| サッシ下部の水抜き穴 | 詰まると外へ抜けない | レールに水が残り続ける |
| 額縁(窓枠の飾り)の裏 | 見えない隙間から回る | 額縁のまわりの変色 |
| サッシ下の壁の中 | 断熱材が湿る(第15回) | 窓下の壁が冷たい |
| 外からの水と合流 | 外壁側から入った水と同じ場所に集まる(第17回) | 雨の翌日にも出るか |
サッシ下部の水抜き穴は、レールに入った雨水を外へ出すための穴です。埃で詰まると、水が溜まったままになります。掃除のときに、レールの外側(屋外側)の小さな穴を確かめてください。
6. 内窓を入れるときに
| 期待できること | 気をつけること |
|---|---|
| 室内側の面の温度が上がる | 既存窓と内窓のあいだの空間が冷える |
| 結露の量が減る場合がある | 既存窓の側で結露することがある |
| 断熱・防音の改善 | あいだの空間の掃除がしにくくなる |
| 工事が比較的短い | 換気の考え方は変わらない(第27回) |
| 既存のサッシを残せる | 既存サッシの水抜き穴をふさがないか確認する |
内窓を入れても、室内の水蒸気量が変わるわけではありません。結露が出る場所が移ることがあります。入れたあとも、既存窓の側と、あいだの空間の状態を確かめてください。
費用は、窓の数・寸法・種類で変わります。現地調査のうえでの見積りが前提になり、現地を見ずに出る金額は目安にとどまります。
7. よくある質問
Q. 毎朝、窓が結露します。拭くしかないですか。
A. 拭くことは有効な対処のひとつです。あわせて、室内の水蒸気量を減らす(洗濯物の室内干しの場所、加湿器の使い方、浴室の扉を閉める)、空気を動かす(カーテンを開ける、家具を離す)、換気を止めない、という3つが手のつけやすいところです。それでも毎日同じ量が出る場合は、窓の性能の見直しが選択肢に入ります。
Q. 窓のゴムパッキンが黒くなっています。
A. レールや下框に溜まった水と埃が条件になり、カビが育つことがあります。文部科学省のカビ対策マニュアルは、色素の除去は困難としています。ゴムに入り込んだ色素は、表面を拭いても残ることがあります。まず、水が溜まらない状態にすること(拭き取り、水抜き穴の確認)が先になります。
Q. 窓台の木が黒ずんできました。
A. 水が乗った状態が続いた手がかりです。範囲を測り、写真を残してください。押してみて柔らかい、へこむ場合は、木部の中まで進んでいる可能性があります。窓台の下の壁(室内側)にシミがないかもあわせて見てください(第16回)。
Q. 複層ガラスに替えれば結露しなくなりますか。
A. ガラス面の温度が上がるため、ガラスでの結露は減る方向に働きます。ただし、枠がアルミのままなら枠での結露は残ることがあります。国土技術政策総合研究所の資料では、アルミの熱伝導率は200、樹脂は0.17です。枠とガラスの両方を見て検討してください。
Q. 結露した水が窓の下の床に落ちています。
A. 下框から溢れている状態です。床材の継ぎ目から下地へ入ると、床のふくらみや軋みにつながることがあります。朝のうちに拭き取り、床に水が残らないようにしてください。すでに床材が変色・ふくらんでいる場合は、範囲を測って記録し、相談してください。
8. まとめ
- 窓は薄く、熱を通しやすく、外に接している。だから家のなかでいちばん冷える
- アルミの熱伝導率は200、ガラスは1、樹脂は0.17、空気は0.0241(国総研)
- 拭いて済むのは下框より上で止まっている場合。窓台が濡れたら壁の中を疑う
- 枠とガラスは別に考える。片方だけ替えても、もう片方で出ることがある
- サッシ下部の水抜き穴が詰まると、レールに水が残り続ける
- 内窓を入れても室内の水蒸気量は変わらない。出る場所が移ることがある
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連載「建物の構造とカビ ― 床下・壁の中・小屋裏」全31回
全体像(第1〜3回)
- 第1回(10/1)家のカビは見えている場所だけではない|床下・壁の中・小屋裏で起きていること
- 第2回(10/2)建物に水が来る4つの出所|雨・地面・室内・配管
- 第3回(10/3)家の断面で見るカビ|基礎から屋根まで、湿気が通る道
床下・基礎(第4〜10回)
- 第4回(10/4)床下のカビはなぜ起きるのか|地面からの水蒸気と床下の温度
- 第5回(10/5)床下換気の基準|施行令22条の換気孔と、ベタ基礎の考え方
- 第6回(10/6)防湿コンクリート・防湿フィルム|「地面を覆う」とは何をしていることか
- 第7回(10/7)床断熱と基礎断熱、カビ目線でどう違うか
- 第8回(10/8)床下の点検で何を見るか|におい・白い粉・土台の色・水の跡
- 第9回(10/9)床下調湿材・床下換気扇は効くのか|公的資料で確認できること
- 第10回(10/10)シロアリとカビ|同じ水分条件で起きる2つの被害
壁の中・外壁(第11〜18回)
- 第11回(10/11)壁の中で何が起きているのか|内部結露という現象
- 第12回(10/12)通気層の役割|壁の中の湿気を外へ出す仕組み
- 第13回(10/13)防湿層はなぜ室内側にあるのか
- 第14回(10/14)冬型結露と夏型結露|壁の中で逆向きに起きる
- 第15回(10/15)断熱材の種類とカビ|繊維系・発泡系で水分の振る舞いが違う
- 第16回(10/16)石膏ボードと壁紙|下地までカビが入るとき
- 第17回(10/17)外壁のひび割れ・シーリング|雨が壁の中に入る経路
- 第18回(10/18)サイディングとモルタル|外壁材で変わる水の逃げ方
小屋裏・屋根(第19〜22回)
- 第19回(10/19)小屋裏のカビ|なぜ夏と冬の両方で起きるのか
- 第20回(10/20)小屋裏換気の基準|方式で変わる換気孔の面積
- 第21回(10/21)屋根の雨漏りとカビ|「滴る」前に起きていること
- 第22回(10/22)天井裏の配管・ダクト|結露する場所が決まっている理由
開口部・水まわり(第23〜27回)
- 第23回(10/23)窓まわりの結露が壁の中に入るとき|サッシ下部と窓台(この記事)
- 第24回(10/24)玄関・勝手口・土間|床のレベル差と冷える面 (公開予定)
- 第25回(10/25)浴室・ユニットバスの裏側|点検口から見えるもの (公開予定)
- 第26回(10/26)キッチン・洗面台の下|配管まわりの小さな漏れ (公開予定)
- 第27回(10/27)24時間換気と家全体の空気の流れ|負圧・正圧とカビ (公開予定)
点検と改修(第28〜31回)
- 第28回(10/28)見えない場所のカビを疑うサイン|におい・シミ・床鳴り・建具の動き (公開予定)
- 第29回(10/29)点検口はどこにあるか|自分で開けてよい場所・開けない場所 (公開予定)
- 第30回(10/30)調査で何が分かるか|含水率計・サーモグラフィ・ファイバースコープ (公開予定)
- 第31回(10/31)断熱改修・リフォームでカビを増やさないために (公開予定)
参考資料(一次情報)
- 国土技術政策総合研究所「木造住宅外皮の換気・通気計画ガイドライン(案)」 小屋裏換気孔の有効面積、外壁通気層15mm以上、床下換気孔300cm²/4m以内
- 国土技術政策総合研究所「省エネと結露」 夏型結露の定義、気密・換気・通気の役割分担、材料の熱伝導率
- 住宅金融支援機構【フラット35】在来木造の耐久性基準 基礎高さ40cm以上、防湿コンクリート6cm以上、防湿フィルム0.1mm以上
- 国土交通省「住宅の品質確保の促進等に関する法律の概要」 10年間の瑕疵担保責任の対象部分、住宅性能表示基準10分野33項目
- 文部科学省「カビ対策マニュアル」基礎編 水分活性Aw0.6以下、相対湿度60%以下、色素の除去は困難
- 厚生労働省「建築物環境衛生管理基準」 相対湿度40〜70%、温度18〜28℃
