執筆:MIST工法®カビバスターズ本部(株式会社せら) 本記事の数値は公的機関の公開資料にもとづいています。
第4回からは、建物を下から順に見ていきます。まずは床下です。
床下は、家の中でもっとも地面に近く、もっとも空気が動きにくい場所です。そして意外に思われるかもしれませんが、床下が濡れやすいのは冬ではなく、梅雨から夏にかけてです。
なぜその季節なのか。理由は2つあります。地面から上がってくる水蒸気と、床下の温度です。この2つが重なると、床下の面で水滴になります。
この記事で分かること
- 床下に水が来る4つの経路
- 床下が夏に濡れる理由(夏型結露)
- 「換気口を開けておけば乾く」が成り立たない場合
- 床下のカビが建物に与える影響(腐朽菌との違い)
- まず確かめる5つのこと
1. 結論:床下は「地面が近く、夏に冷える」場所
- 地面からは水蒸気が上がってくる。土がむき出しなら、その量は季節を通じて続きます
- 床下は夏に外気より冷たい。湿った外気が入ると、その冷たい面で結露します(夏型結露)
- だから「換気口を開けておけば乾く」とは限らない。外の空気が乾いているかどうかで、換気の効果は変わります
国土技術政策総合研究所の「省エネと結露」は、夏型結露のひとつとして「室内をエアコンで冷房した際、夏季に水分を大量に含んだ屋外空気が温度の低い床下で水滴になる現象」を挙げています。床下で起きる結露は、冬型ではなく夏型だという点が、床下を考えるときの出発点です。
2. 床下に水が来る4つの経路
| 経路 | 起きること | 季節の動き | 手がかり |
|---|---|---|---|
| ① 地面からの水蒸気 | 土から水蒸気が立ち上がり、床下の空気の湿度が上がる | 一年中。雨のあとに強くなる | 床下の地面が黒っぽく湿っている。防湿の措置がない |
| ② 外気からの持ち込み(夏型結露) | 湿った外気が換気口から入り、冷たい面で水滴になる | 梅雨〜夏 | 基礎の内側や配管の表面が濡れている。夏に強い |
| ③ 雨水の流入 | 敷地の勾配や基礎の立ち上がりから、雨水が床下へ入る | 大雨・長雨のあと | 床下の一部に水たまり。決まった場所だけ濡れる |
| ④ 配管からの漏れ | 給水・給湯・排水管の漏れ。床下の一点が濡れ続ける | 季節に関係なく続く | 限られた範囲だけが濡れている。水道使用量が増える |
4つのうち、①と②は面で起きるのに対し、③と④は点や線で起きるのが違いです。床下全体がまんべんなく湿っているのか、一か所だけ濡れているのかで、疑う先が変わります。
① 地面からの水蒸気を止める方法
住宅金融支援機構の【フラット35】在来木造の耐久性基準は、床下地面の防湿措置として次のどちらかを求めています。
| 方法 | 仕様 |
|---|---|
| コンクリートを打設する | 厚さ6cm以上 |
| 防湿フィルムを敷きつめる | 厚さ0.1mm以上 |
建築基準法施行令第22条も、最下階の居室の床が木造の場合、床の高さを直下の地面から床の上面まで45cm以上とし、外壁の床下部分に壁の長さ5m以下ごとに面積300cm²以上の換気孔を設けてねずみの侵入を防ぐ設備をすることを定めています。ただし、床下をコンクリート、たたきその他これらに類する材料で覆う場合には適用しないとしています。
用語のたしかめ
つまり、床下の湿気には2つの考え方があります。「地面を覆って水蒸気を止める」か、「空気を通して乾かす」か。法令も基準も両方を扱っています。自分の家がどちらの考え方で建てられているかを知ることが、第一歩になります。第5回・第6回でそれぞれを詳しく扱います。
3. 床下が夏に濡れる仕組み
地面の温度は、年間を通じての変化が地表の空気より小さいという性質があります。深くなるほど変化は小さくなります。床下は地面のすぐ上にあるので、その影響を受けます。
この結果、こうなります。
| 季節 | 外気 | 床下 | 起きること |
|---|---|---|---|
| 冬 | 冷たく乾いている | 外気より温かめ | 結露しにくい。換気すると乾きやすい |
| 春 | 暖かくなり、湿度も上がる | まだ冷たい | 結露が始まることがある |
| 梅雨 | 暖かく、とても湿っている | 外気より冷たい | 入ってきた空気が冷やされ、結露しやすい |
| 夏 | 暑く、湿っている | 外気より冷たい | 同上。冷房するとさらに床が冷える |
| 秋 | 気温が下がる。雨が多い | 夏の熱が残る | 徐々におさまる。長雨で戻ることがある |
気象庁の東京の月別平年値(1991〜2020年)では、6月の平均相対湿度は75%、7月は76%です。参考までに1月は51%です。梅雨から夏にかけて、外の空気そのものが湿っているということです。
梅雨〜夏は、換気口を開けても乾くとは限らない
- 外の空気が湿っているとき、その空気を床下に入れても、床下の湿度は下がりません
- むしろ、冷たい面に触れて水滴になることがあります(夏型結露)
- 換気の考え方そのものは正しく、問題は「いつ」「どんな空気を」入れるかです
- 除湿機・エアコン除湿・換気の使い分けは知恵袋Q&A 第4回にまとめています
4. 床下でカビが起きるとどうなるか
床下のカビは、まずにおいとして上がってきます。床の隙間、床下収納、押入れの床などから、室内へ回ります。
カビと腐朽菌は別のもの
床下の被害を考えるとき、カビと木材腐朽菌を分けて理解しておくと判断しやすくなります。国土交通省 大臣官房官庁営繕部の資料は、それぞれの条件を次のように示しています。
| カビ | 木材腐朽菌 | |
|---|---|---|
| 何を栄養にするか | 木材表面に付着した塵埃 | 木材の栄養成分(セルロース、ヘミセルロース、リグニン等) |
| 温度の条件 | 25〜30℃ | 20〜35℃ |
| 水分の条件 | 木材表面が濡れる状態 | 水分 |
| 酸素 | 必要 | 必要 |
| 木材への影響 | 表面の変色。木材そのものを分解はしない | 木材を分解し、強度が落ちる |
| 見え方 | 黒・緑・白などの斑点や面 | 木がやせる、色が変わる、もろくなる |
同じ資料は、構造用集成材の含水率が長期間継続的または断続的に19%を超える環境を「環境A」として区分しています。これは劣化が進みやすい環境を表す区分であって、「19%を超えたらカビが生える」という閾値ではありません。ただ、木が水を含んだ状態が長く続くと、カビだけでなく腐朽菌の条件にも近づくということは押さえておく価値があります。
カビと腐朽菌の違いについては、カビによる木材の腐朽|カビと腐朽菌の違い、腐る条件でも扱っています。
におい以外に出てくるサイン
| サイン | 何が起きている可能性があるか |
|---|---|
| 床がしっとりする・冷たい | 床下の湿度が高い |
| 床が沈む・鳴る | 床下地が水分を含んで傷んでいる |
| 1階だけカビ臭い | 床下からにおいが上がってきている |
| 畳の裏や床下収納にカビ | 床下の湿気が床を通り抜けている |
| 基礎の外側に白い粉が出る | 水がコンクリートを通って移動している(エフロレッセンス) |
| シロアリの羽アリを見た | 湿った木材があり、条件が重なっている(第10回) |
農林水産省の資料は、エフロレッセンスについて「コンクリート中の水分が表面で蒸発し可溶成分のカルシウムが乾燥して生成される白い析出物」であり、品質への悪影響はないが水の移動に関連すると説明しています。白い粉そのものが問題なのではなく、そこに水の通り道があることの手がかりだという読み方になります。
5. まず確かめる5つのこと
- 基礎に換気口があるか。あれば床下換気タイプ、なければ基礎断熱の可能性があります(第7回)
- 換気口がふさがれていないか。物置、自転車、植栽、増築部分、エアコンの室外機などでふさがれていることがあります
- 敷地の勾配。建物のほうへ雨水が流れてくる形になっていないか。隣地が高い場合も見ておきます
- 基礎の立ち上がりの高さ。フラット35の耐久性基準では、地面から基礎の上端または地面から土台下端までの高さを40cm以上としています
- 床下点検口を開けて、手前を写真に撮る。地面が土か、覆われているか。湿っているか。手の届く範囲だけで構いません
床下にもぐらないでください
- 文部科学省のカビ対策マニュアルは、生きているカビはカビ毒、死んでいてもアレルゲンになるとして呼吸用保護具の着用を案内しています。床下は胞子と埃が舞う環境です
- 配管・配線があり、防湿フィルムや断熱材を踏み抜くと、あとから水の通り道をつくってしまうことがあります
- 見えたものの意味(古いシミか新しいか、カビか腐朽か)は写真だけでは判断が難しい場面が多くあります
- 点検口から手前を撮るところまでにして、その先は調査を依頼するのが現実的です
6. よくある質問
Q. 床下に調湿材や炭を敷けば直りますか。
A. これらの効果を示す公的資料は、本記事の執筆時点では見つかっていません(要追加調査)。第9回であらためて扱いますが、いずれにしても、水の出所が残ったままでは効果は限られます。まず、地面がむき出しか、換気口がふさがれていないか、配管の漏れがないかを確かめるほうが先です。
Q. 床下換気扇をつけるとよいと聞きました。
A. 同じく、住宅の床下換気扇の効果を定量的に示す公的資料は見つかっていません(要追加調査)。梅雨や夏は外の空気そのものが湿っているため、その空気を送り込んでも乾燥につながらない場合がある点には注意が必要です。第9回で扱います。
Q. 床下の湿気で、家が傷むことはありますか。
A. 木材が水分を含んだ状態が長く続くと、カビだけでなく木材腐朽菌の条件にも近づきます。国土交通省 官庁営繕部の資料は、腐朽菌の条件として木材の栄養成分・温度20〜35℃・水分・酸素を挙げています。腐朽菌は木材そのものを分解するため、カビよりも建物への影響が大きくなります。
Q. マンションでも床下のカビはありますか。
A. 構造が違うため、戸建てのような床下空間がない場合が多くあります。ただし、1階や地下に接する住戸、二重床の構造、パイプスペースなどで似た現象が起きることがあります。管理規約で専有部分と共用部分の扱いが分かれるため、管理組合や管理会社に相談するところから始めてください。
7. まとめ
- 床下に水が来るのは、地面・外気(夏型結露)・雨水の流入・配管の4つ
- 地面と外気は面で起き、雨水と配管は点や線で起きる。濡れ方で疑う先が変わる
- 床下が濡れやすいのは梅雨から夏。地面の温度は変化が小さく、夏は外気より冷たい
- だから換気口を開けておけば乾く、とは限らない。外の空気が乾いているかで効果が変わる
- まず、換気口の有無とふさがり、敷地の勾配、基礎の高さ、点検口から見える地面の5つを確かめる
手に負えないカビは、お近くのカビバスターズへ
自分で試して2回落ちない、面積が広い、壁や床の内側から出ている、においが消えない――そうしたカビは、原因調査から入る専門業者の領域です。MIST工法®カビバスターズは全国に加盟店があります。まずはお近くの店舗、または本部にご相談ください。
- 全国のカビ取り加盟店一覧(カビバスターズ)
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連載「建物の構造とカビ ― 床下・壁の中・小屋裏」全31回
全体像(第1〜3回)
- 第1回(10/1)家のカビは見えている場所だけではない|床下・壁の中・小屋裏で起きていること
- 第2回(10/2)建物に水が来る4つの出所|雨・地面・室内・配管
- 第3回(10/3)家の断面で見るカビ|基礎から屋根まで、湿気が通る道
床下・基礎(第4〜10回)
- 第4回(10/4)床下のカビはなぜ起きるのか|地面からの水蒸気と床下の温度(この記事)
- 第5回(10/5)床下換気の基準|施行令22条の換気孔と、ベタ基礎の考え方
- 第6回(10/6)防湿コンクリート・防湿フィルム|「地面を覆う」とは何をしていることか
- 第7回(10/7)床断熱と基礎断熱、カビ目線でどう違うか
- 第8回(10/8)床下の点検で何を見るか|におい・白い粉・土台の色・水の跡
- 第9回(10/9)床下調湿材・床下換気扇は効くのか|公的資料で確認できること
- 第10回(10/10)シロアリとカビ|同じ水分条件で起きる2つの被害
壁の中・外壁(第11〜18回)
- 第11回(10/11)壁の中で何が起きているのか|内部結露という現象
- 第12回(10/12)通気層の役割|壁の中の湿気を外へ出す仕組み
- 第13回(10/13)防湿層はなぜ室内側にあるのか
- 第14回(10/14)冬型結露と夏型結露|壁の中で逆向きに起きる
- 第15回(10/15)断熱材の種類とカビ|繊維系・発泡系で水分の振る舞いが違う
- 第16回(10/16)石膏ボードと壁紙|下地までカビが入るとき
- 第17回(10/17)外壁のひび割れ・シーリング|雨が壁の中に入る経路
- 第18回(10/18)サイディングとモルタル|外壁材で変わる水の逃げ方
小屋裏・屋根(第19〜22回)
- 第19回(10/19)小屋裏のカビ|なぜ夏と冬の両方で起きるのか
- 第20回(10/20)小屋裏換気の基準|方式で変わる換気孔の面積
- 第21回(10/21)屋根の雨漏りとカビ|「滴る」前に起きていること
- 第22回(10/22)天井裏の配管・ダクト|結露する場所が決まっている理由
開口部・水まわり(第23〜27回)
- 第23回(10/23)窓まわりの結露が壁の中に入るとき|サッシ下部と窓台 (公開予定)
- 第24回(10/24)玄関・勝手口・土間|床のレベル差と冷える面 (公開予定)
- 第25回(10/25)浴室・ユニットバスの裏側|点検口から見えるもの (公開予定)
- 第26回(10/26)キッチン・洗面台の下|配管まわりの小さな漏れ (公開予定)
- 第27回(10/27)24時間換気と家全体の空気の流れ|負圧・正圧とカビ (公開予定)
点検と改修(第28〜31回)
- 第28回(10/28)見えない場所のカビを疑うサイン|におい・シミ・床鳴り・建具の動き (公開予定)
- 第29回(10/29)点検口はどこにあるか|自分で開けてよい場所・開けない場所 (公開予定)
- 第30回(10/30)調査で何が分かるか|含水率計・サーモグラフィ・ファイバースコープ (公開予定)
- 第31回(10/31)断熱改修・リフォームでカビを増やさないために (公開予定)
参考資料(一次情報)
- 国土技術政策総合研究所「木造住宅外皮の換気・通気計画ガイドライン(案)」 小屋裏換気孔の有効面積、外壁通気層15mm以上、床下換気孔300cm²/4m以内
- 国土技術政策総合研究所「省エネと結露」 夏型結露の定義、気密・換気・通気の役割分担、材料の熱伝導率
- 住宅金融支援機構【フラット35】在来木造の耐久性基準 基礎高さ40cm以上、防湿コンクリート6cm以上、防湿フィルム0.1mm以上
- 国土交通省「住宅の品質確保の促進等に関する法律の概要」 10年間の瑕疵担保責任の対象部分、住宅性能表示基準10分野33項目
- 文部科学省「カビ対策マニュアル」基礎編 水分活性Aw0.6以下、相対湿度60%以下、色素の除去は困難
- 厚生労働省「建築物環境衛生管理基準」 相対湿度40〜70%、温度18〜28℃
- 国土交通省 大臣官房官庁営繕部「木材を利用した官庁施設の適正な保全に資する整備のための留意事項」 カビと木材腐朽菌の条件の違い、含水率19%を超える環境の区分
- 気象庁 東京の月別平年値(1991〜2020年) 6月の平均相対湿度75%、7月76%、1月51%
- 農林水産省「農業水利施設の機能保全の手引き」参考資料 エフロレッセンスはコンクリート中の水分が表面で蒸発して生成される
