執筆:MIST工法®カビバスターズ本部(株式会社せら) 本記事の数値は公的機関の公開資料にもとづいています。
第4回から第7回まで、床下で湿気がどう動くかを見てきました。第8回は、それを自分の家で確かめる話です。
床下点検は、専門の道具がなくても、点検口を開けて懐中電灯で照らすだけで分かることがかなりあります。ただし、何を見るかを決めずに覗いても、何も見えません。暗くて狭い場所なので、見るものを絞っておく必要があります。
この記事では、におい・白い粉・木部の色・水の跡の4つに絞って、それぞれ何を意味するのかを整理します。
この記事で分かること
- 床下点検口を開ける前に用意するもの
- においから読み取れること(カビ臭・土のにおい・下水のにおい)
- 白い粉の正体はひとつではないこと
- 土台や大引の色の変化が何を示すか
- 水の跡の「形」で出所が絞れること
- 見たものを記録して、次回と比べる方法
1. 結論:床下で見るのは「水が来た跡」と「材が変わった跡」
- 床下は、水が来たことを記録している場所です。濡れて乾いた跡、白く粉をふいた跡、木の色が変わった跡が残ります
- 今そこが濡れているかどうかより、過去に濡れたかどうかが大事です。乾いた日に見ても、跡は残っています
- 見るものを4つに絞ると、暗い床下でも判断しやすくなります。におい・白い粉・木部の色・水の跡です
床下のカビそのものについては、床下のカビでも扱っています。この記事は、その前段階の「見つけかた」に絞ります。
2. 点検の前に
| 用意するもの | 理由 |
|---|---|
| 懐中電灯(できれば強いもの) | 床下は完全な暗闇。スマートフォンのライトでは届く範囲が狭い |
| スマートフォン(撮影用) | 記録を残す。あとで比べるため |
| マスク | ほこりとカビの胞子を吸い込まないため |
| 手袋 | 釘やコンクリートの角、断熱材の繊維から手を守る |
| 汚れてよい服 | 潜る場合。潜らない場合も点検口のまわりはほこりが出る |
| 温湿度計(あれば) | 床下と室内を比べるため。第7回参照 |
| ものさし・メジャー | 水の跡の高さや範囲を記録するため |
潜る前に確認してください
- 床下の高さが足りない場合、無理に潜ると出られなくなることがあります。住宅金融支援機構の【フラット35】在来木造の耐久性基準では、基礎の高さを地面から40cm以上としています。これは点検のための高さの目安のひとつです
- 一人では潜らないでください。だれかに点検口のそばにいてもらってください
- 配線・配管に触れないでください。ガス管や電線が通っています
- 体調に不安がある場合、狭い場所が苦手な場合は、潜らずに点検口から見える範囲だけにしてください
- 当社は医療機関ではありません。体調に関わる判断は、医療機関にご相談ください
潜らなくても、点検口から懐中電灯で照らすだけで、かなりの情報が取れます。まずはそこから始めてください。
3. 見るもの① におい
点検口を開けた瞬間のにおいは、そのあと数分で鼻が慣れてしまいます。開けてすぐに嗅いで、その場でメモしてください。
| におい | 考えられること | 次に見るところ |
|---|---|---|
| 土のにおい・湿った土のにおい | 地面がむき出しか、防湿の措置が十分でない可能性 | 点検口から地面を見る。第6回参照 |
| かび臭さ(こもったにおい) | 床下のどこかでカビが育っている可能性 | 木部の色、断熱材の裏、基礎の内側 |
| 下水のにおい・生活排水のにおい | 排水管の漏れ、または封水切れの可能性 | 配管の継ぎ目、集合部分。第2回参照 |
| 薬品のようなにおい | 過去の防蟻処理、または建材由来の可能性 | 施工履歴を確認する |
| 何のにおいもしない | 床下の空気が動いていて、乾いている状態の可能性 | 他の3項目を順に見る |
用語のたしかめ
においが「する/しない」は、その日の湿度に左右されます。雨の翌日と晴天が続いた日では変わります。1回の点検で決めず、季節を変えて2〜3回嗅ぐと、状態がつかみやすくなります。
4. 見るもの② 白い粉
床下で白いものを見つけると、多くの方がカビを疑います。ただし、白い粉には少なくとも3つの可能性があり、対処が変わります。
| 見た目 | 触れたときの感じ | 出ている場所 | 考えられること |
|---|---|---|---|
| 粉が吹いたように白い。結晶っぽい | 硬い。こすると粉になる | コンクリートの表面、ひび割れの周囲 | コンクリートから成分が溶け出して表面で固まったもの(白華)。水がそこを通った跡 |
| 綿のように盛り上がる。毛羽立つ | やわらかい。払うと取れる | 木部、断熱材、段ボールなどの有機物の上 | カビの可能性。床下のカビを参照 |
| 細かい木くずのような粉。粒が見える | さらさらしている | 木部の下、蟻道のそば | 木材を食べる生物の活動の可能性。第10回で扱う |
| 白いというより灰色。埃状 | 払うと舞う | 床下全体 | 単なるほこりの可能性 |
白華そのものは構造の問題ではありませんが
- 白華が出ているということは、そこに水が通ったということです。白華を拭き取っても、水の出所は変わりません
- コンクリートの打設時の余剰水が出る場合もあります。コンクリートの余剰水を参照してください
- 新築1〜2年目か、それより古い家かで意味が変わります。古い家で新しく出たなら、水の出所を探す手がかりになります
- 白い粉の種類を現地で確定するのは難しい場合があります。判断がつかないときは、写真を撮って専門業者に相談してください
5. 見るもの③ 木部の色
土台・大引・根太・床裏の合板は、乾いていれば元の木の色のままです。色が変わっているところは、そこに水分があった(またはある)ということです。
| 色の変化 | 見え方 | 考えられること |
|---|---|---|
| 黒い点が散っている | 木の表面に点状・面状の黒ずみ | カビの色素が入り込んでいる可能性。文部科学省のカビ対策マニュアルは、色素の除去は困難としています |
| 茶色〜こげ茶に変色し、もろい | 触るとぼろぼろ崩れる。角がくずれる | 腐朽が進んでいる可能性。カビによる木材の腐朽を参照 |
| 白っぽく脱色している | 木目が薄くなっている | 長期間の水分の影響、または薬剤の影響の可能性 |
| 一部だけ濃い色の帯がある | 帯状に色が違う。上下に境目がある | 水位の跡。そこまで水が来たことがある |
| 金物(ボルト・プレート)が錆びている | 赤茶色の錆。木部に錆の跡が広がる | その周囲が濡れていた可能性 |
含水率について
木材の含水率は含水率計で測れます。官庁営繕関係基準では、構造材の含水率について基準が示されていますが、これはカビが生える/生えないの境目を示したものではありません。含水率の数値は、木材が乾いた状態かどうかを示す指標として使い、カビの判断は色・におい・広がりとあわせて行ってください。
用語のたしかめ
文部科学省のカビ対策マニュアルは、多くのカビが育つ条件として水分活性0.6以上を挙げ、相対湿度は温度の変化にかかわらず常に60%以下に保つことを案内しています。床下に温湿度計を置いて、季節ごとに記録すると、その家の状態が見えてきます。
6. 見るもの④ 水の跡
水の跡は、形で出所が絞れます。第2回で扱った4つの出所(雨・地面・室内・配管)が、床下では違う形で現れます。
| 跡の形 | 場所 | 考えられる出所 |
|---|---|---|
| 点で濡れている。真上に配管がある | 配管の真下、継ぎ目の下 | 配管からの漏れ。第2回参照 |
| 線状に濡れている。基礎に沿う | 基礎の内側の立ち上がりに沿って | 外から入った水、または基礎のひび割れを通った水 |
| 面で湿っている。床下全体 | 地面全面 | 地面からの水蒸気。第4回・第6回参照 |
| 換気口の真下だけ濡れている | 換気口の直下 | 換気口から吹き込んだ雨、または外気の結露 |
| 季節を問わず同じ場所が濡れる | 同じ位置 | 配管を疑う。雨や結露なら季節で変わる |
| 雨の翌日だけ濡れる | 外周に近い場所 | 雨水の流入。外の地面の勾配や排水を確認する |
国土技術政策総合研究所の「省エネと結露」は、夏型結露を、高温多湿な外気が壁内などに入り、冷房で冷えた面に触れて結露する現象として説明しています。床下でも同じことが起き、第4回で見たとおり、夏は床下の温度が外気より低くなる場合があります。
7. 記録の取り方
| 記録すること | 書き方の例 |
|---|---|
| 点検した日 | 2026年10月8日 天気:晴 前日:雨 |
| 点検口の位置 | 洗面所の床下収納 |
| においの有無 | 開けた直後に土のにおい。かび臭さは感じない |
| 白い粉 | 基礎の内側、玄関側の隅に結晶状のもの。写真① |
| 木部の色 | 土台に変色なし。金物に錆なし |
| 水の跡 | なし。地面は乾いている |
| 床下の温湿度 | 温度22℃/湿度68%(室内は24℃/55%) |
| 次回の予定 | 2027年6月(梅雨時に再確認) |
写真は、同じ場所から撮るようにしてください。次回と比べるときに、場所が違うと比較になりません。点検口の枠を画面に入れておくと、位置がそろえやすくなります。
どのくらいの頻度で見るか
国土交通省の資料によれば、住宅品質確保法により、新築住宅の基本構造部分について10年間の瑕疵担保責任が定められています。この期間内に異常を見つけられるよう、年1〜2回、季節を変えて見るのが目安になります。梅雨時と冬の2回見ると、夏型と冬型の両方の状態がつかめます。
8. よくある質問
Q. 床下に潜らないと、点検の意味はありませんか。
A. いいえ、点検口から見える範囲だけでも意味があります。においと、点検口の周囲の地面の状態、見える範囲の木部の色は確認できます。潜らないと分からないのは、家全体の状況や、離れた場所の水の跡です。まずは点検口から始めて、気になる点があれば専門業者に相談する形でも十分です。
Q. 床下点検口が家のどこにあるか分かりません。
A. 洗面所の床下収納、キッチンの床下収納、和室の畳の下、階段下の収納などにあることが多い場所です。マンションや、基礎の形式によっては、そもそも点検口がない場合もあります。図面があれば記載があります。
Q. 白い粉を見つけましたが、拭き取ってよいですか。
A. 拭き取る前に、写真を撮ってください。拭き取ると、どこにどれだけ出ていたかが分からなくなります。また、白い粉の正体によって対処が変わります。カビの可能性がある場合、乾いた状態で払うと胞子が舞います。マスクをして、換気ができる状態で行ってください。判断がつかない場合は、そのままにして相談されることをおすすめします。
Q. 床下の湿度が70%を超えていました。すぐに何かすべきですか。
A. 厚生労働省の建築物環境衛生管理基準は、相対湿度40〜70%を基準として示しています。文部科学省のカビ対策マニュアルは、相対湿度を常に60%以下に保つことを案内しています。ただし、1回の測定では判断できません。同じ場所で、季節を変えて何回か測ってください。その上で、換気口のふさがり(第5回)と地面の防湿(第6回)を順に確認するのが、次の手順になります。
Q. カビを見つけたら、自分で取ってもよいですか。
A. 範囲が狭く、手が届き、換気ができる場所であれば、市販のカビ取り剤で対処できる場合があります。ただし床下は、換気が難しく、姿勢が取りにくく、薬剤が流れる先が見えない場所です。床下で薬剤を使う場合は、範囲と換気を確認してからにしてください。広い範囲に及ぶ場合、木部の内部まで色素が入っている場合は、表面を拭くだけでは戻りません。
9. まとめ
- 床下は、水が来たことを記録している場所。今濡れているかより、過去の跡を見る
- 見るものを4つに絞る。におい・白い粉・木部の色・水の跡
- においは開けた直後に嗅ぐ。鼻はすぐ慣れる
- 白い粉は一種類ではない。白華・カビ・木くず・ほこりで対処が変わる
- 木部の色の変化は、そこに水分があった証拠。帯状の色の変化は水位の跡
- 水の跡は形で出所が絞れる。点なら配管、面なら地面、線なら基礎まわり
- 写真は同じ場所から撮り、次回と比べる。年1〜2回、季節を変えて
手に負えないカビは、お近くのカビバスターズへ
自分で試して2回落ちない、面積が広い、壁や床の内側から出ている、においが消えない――そうしたカビは、原因調査から入る専門業者の領域です。MIST工法®カビバスターズは全国に加盟店があります。まずはお近くの店舗、または本部にご相談ください。
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連載「建物の構造とカビ ― 床下・壁の中・小屋裏」全31回
全体像(第1〜3回)
- 第1回(10/1)家のカビは見えている場所だけではない|床下・壁の中・小屋裏で起きていること
- 第2回(10/2)建物に水が来る4つの出所|雨・地面・室内・配管
- 第3回(10/3)家の断面で見るカビ|基礎から屋根まで、湿気が通る道
床下・基礎(第4〜10回)
- 第4回(10/4)床下のカビはなぜ起きるのか|地面からの水蒸気と床下の温度
- 第5回(10/5)床下換気の基準|施行令22条の換気孔と、ベタ基礎の考え方
- 第6回(10/6)防湿コンクリート・防湿フィルム|「地面を覆う」とは何をしていることか
- 第7回(10/7)床断熱と基礎断熱、カビ目線でどう違うか
- 第8回(10/8)床下の点検で何を見るか|におい・白い粉・土台の色・水の跡(この記事)
- 第9回(10/9)床下調湿材・床下換気扇は効くのか|公的資料で確認できること
- 第10回(10/10)シロアリとカビ|同じ水分条件で起きる2つの被害
壁の中・外壁(第11〜18回)
- 第11回(10/11)壁の中で何が起きているのか|内部結露という現象
- 第12回(10/12)通気層の役割|壁の中の湿気を外へ出す仕組み
- 第13回(10/13)防湿層はなぜ室内側にあるのか
- 第14回(10/14)冬型結露と夏型結露|壁の中で逆向きに起きる
- 第15回(10/15)断熱材の種類とカビ|繊維系・発泡系で水分の振る舞いが違う
- 第16回(10/16)石膏ボードと壁紙|下地までカビが入るとき
- 第17回(10/17)外壁のひび割れ・シーリング|雨が壁の中に入る経路
- 第18回(10/18)サイディングとモルタル|外壁材で変わる水の逃げ方
小屋裏・屋根(第19〜22回)
- 第19回(10/19)小屋裏のカビ|なぜ夏と冬の両方で起きるのか
- 第20回(10/20)小屋裏換気の基準|方式で変わる換気孔の面積
- 第21回(10/21)屋根の雨漏りとカビ|「滴る」前に起きていること
- 第22回(10/22)天井裏の配管・ダクト|結露する場所が決まっている理由
開口部・水まわり(第23〜27回)
- 第23回(10/23)窓まわりの結露が壁の中に入るとき|サッシ下部と窓台 (公開予定)
- 第24回(10/24)玄関・勝手口・土間|床のレベル差と冷える面 (公開予定)
- 第25回(10/25)浴室・ユニットバスの裏側|点検口から見えるもの (公開予定)
- 第26回(10/26)キッチン・洗面台の下|配管まわりの小さな漏れ (公開予定)
- 第27回(10/27)24時間換気と家全体の空気の流れ|負圧・正圧とカビ (公開予定)
点検と改修(第28〜31回)
- 第28回(10/28)見えない場所のカビを疑うサイン|におい・シミ・床鳴り・建具の動き (公開予定)
- 第29回(10/29)点検口はどこにあるか|自分で開けてよい場所・開けない場所 (公開予定)
- 第30回(10/30)調査で何が分かるか|含水率計・サーモグラフィ・ファイバースコープ (公開予定)
- 第31回(10/31)断熱改修・リフォームでカビを増やさないために (公開予定)
参考資料(一次情報)
- 国土技術政策総合研究所「木造住宅外皮の換気・通気計画ガイドライン(案)」 小屋裏換気孔の有効面積、外壁通気層15mm以上、床下換気孔300cm²/4m以内
- 国土技術政策総合研究所「省エネと結露」 夏型結露の定義、気密・換気・通気の役割分担、材料の熱伝導率
- 住宅金融支援機構【フラット35】在来木造の耐久性基準 基礎高さ40cm以上、防湿コンクリート6cm以上、防湿フィルム0.1mm以上
- 国土交通省「住宅の品質確保の促進等に関する法律の概要」 10年間の瑕疵担保責任の対象部分、住宅性能表示基準10分野33項目
- 文部科学省「カビ対策マニュアル」基礎編 水分活性Aw0.6以下、相対湿度60%以下、色素の除去は困難
- 厚生労働省「建築物環境衛生管理基準」 相対湿度40〜70%、温度18〜28℃
