執筆:MIST工法®カビバスターズ本部(株式会社せら) 本記事の数値は公的機関の公開資料にもとづいています。
第24回は、玄関・勝手口・土間です。ここは、家のなかで床の高さが変わる場所であり、同時に地面に近い場所でもあります。
床下は基礎で囲まれ、地面から離されています(第4回〜第7回)。ところが玄関の土間は、コンクリートが直接、地面の上にあります。
この段差のところで、床下の空気の流れが切れたり、冷たい面ができたりします。下駄箱の裏や、土間収納がカビやすいのはこのためです。
この記事で分かること
- 玄関土間が、床下とどう違うか
- なぜ玄関まわりに冷たい面ができるのか
- 下駄箱・シューズクローク・土間収納で起きること
- 勝手口・掃き出し窓との共通点
- 見るところと、手のつけやすい対処
1. 結論:土間は地面に近く、床下と切れている
- 居室の床は、基礎の上に持ち上げられています。建築基準法施行令第22条は、床の高さを直下の地面から床の上面まで45cm以上としています(床下をコンクリート等で覆う場合は適用しない)
- 土間は、地面のすぐ上にコンクリートが打たれています。地面の温度の影響を受けやすい場所です
- その境目で、床下の空気の流れが切れることがあります。玄関まわりに空気が動かない区画ができます
第10回で触れたとおり、公益社団法人日本しろあり対策協会の防除施工標準仕様書は、土壌処理について「玄関ポーチなど外周部のコンクリート部分は建築物の一部と見なす」としています。玄関まわりが、床下とは別に扱われることがある場所だということです。
2. なぜ冷たい面ができるか
| 場所 | 冷える理由 | 起きること |
|---|---|---|
| 土間のコンクリート面 | 地面の温度に近づく。熱容量が大きく、温まりにくい | 夏は空気より冷たくなり、結露することがある |
| 玄関ドアの枠 | 金属の枠が外に接している(第23回・アルミの熱伝導率200) | 枠の室内側に結露 |
| ドアの下端 | 外気が入りやすい | 足元が冷える |
| 土間と床の段差の立ち上がり | 土間からの冷えが伝わる | 段差の近くの床が冷たい |
| 玄関の壁の下部 | 土間に接する部分 | 壁の下部が冷たい |
| 勝手口まわり | 同じ構造で、さらに使用頻度が低い | 空気が動かない |
第14回で見た夏型結露は、ここでも起きます。夏、土間のコンクリートは外気より冷たくなることがあります。湿った空気が触れると、面に水がつきます。
3. 下駄箱・シューズクローク・土間収納
| 条件 | 何が起きるか | 手のつけやすい対処 |
|---|---|---|
| 濡れた靴をすぐ入れる | 収納の中の水蒸気が増える | 乾かしてから入れる |
| 扉を閉めたまま | 空気が動かない | 定期的に開ける。すのこ状の棚にする |
| 背板が外壁に接している | 背板の裏が冷える | 壁から少し離す。詰め込みすぎない |
| 土間収納の床がコンクリート | 面が冷たい | 直置きせず、すのこ・棚を使う |
| 段ボールを置く | 湿気を含み、カビの条件になる | 段ボールは置かない(第10回) |
| 傘を濡れたまま立てる | 水が蒸発して収納内の湿度が上がる | 外で水を切る、乾かす |
| ゴルフバッグ・ベビーカー | 外から持ち込む水と泥 | 拭いてから入れる |
靴のカビは、下駄箱の中の湿度の結果
- 文部科学省のカビ対策マニュアルは、多くのカビが育つ条件として水分活性0.6以上を挙げ、相対湿度を常に60%以下に保つことを案内しています
- 下駄箱の中に温湿度計を入れて、室内と比べてみてください。差があれば、そこが条件です
- 革靴は、それ自体が有機物です。湿った状態が続けば条件がそろいます
- 当社は医療機関ではありません。体調に関わる判断は、医療機関にご相談ください
4. 玄関ドア・勝手口ドア
| 部位 | 見るところ | 考えられること |
|---|---|---|
| ドア枠の室内側 | 結露、水の跡 | 枠が冷えている(第23回) |
| ドアの下端 | 隙間、パッキンの状態 | 外気の出入り |
| たてつけ | 閉まりにくい、擦れる | 木部の膨張、または建物の動き(第28回) |
| ドアの下の土間 | 水が溜まった跡 | 吹き込み、または結露水 |
| ポーチの排水 | 雨のあとに水が残るか | 勾配、排水口の詰まり |
| 外側の土の高さ | 土間や基礎に迫っていないか | 第5回・第12回と同じ確認 |
勝手口は、玄関より使用頻度が低いことが多く、開け閉めによる空気の入れ替わりが起きにくい場所です。加えて、北側や建物の陰にあることが多く、乾きにくい条件がそろいます。
5. 掃き出し窓・ウッドデッキとの関係
| 場所 | 起きること | 見るところ |
|---|---|---|
| 掃き出し窓の下枠 | レールに水が溜まる(第23回) | 水抜き穴の詰まり |
| 窓の外の土間・テラス | 水がはねて外壁の下部に当たる | 外壁の下端の汚れ・変色 |
| ウッドデッキ | 下に空気が通らないと湿気がこもる | デッキの下の地面、外壁との取り合い |
| ウッドデッキが基礎に接する | 床下換気口・通気層の入口をふさぐ | 第5回・第12回と同じ確認 |
| サンルーム・テラス囲い | 既存の外壁が室内側になる | 取り合いの納まり、結露 |
外まわりの工事で、通気の入口をふさがない
- ウッドデッキ、テラス、サンルーム、物置の設置で、床下換気口や土台水切りがふさがることがあります
- 住宅金融支援機構の【フラット35】在来木造の耐久性基準は、基礎の高さを地面から40cm以上としています
- 工事を依頼するときは、換気口と水切りの下を確保してほしいと伝えてください
- 設置後も、年1回は周囲を一周して確認してください(第8回・第12回)
6. 見るところと対処
| どこ | 見るもの | 記録 |
|---|---|---|
| 下駄箱の中 | におい、湿り、カビの点 | 温湿度計の値と写真 |
| 下駄箱の背板・底板 | 色の変化、濡れ | 写真 |
| 土間と床の段差 | 段差の立ち上がりの冷たさ | 手のひらで触って比べる |
| 玄関ドアの枠 | 結露の跡、パッキン | 冬の朝に撮る |
| 外の土間・ポーチ | 雨のあとに水が残るか | 雨の翌日に撮る |
| 外周の地面の高さ | 換気口・水切りとの関係 | メジャーで測る |
| 対処 | 内容 | 効きかたの考え方 |
|---|---|---|
| 濡れたものを乾かしてから入れる | 靴・傘・ベビーカー | 水の持ち込みを減らす |
| 収納の扉を定期的に開ける | 週に何回か、数時間 | 空気を動かす |
| すのこ・棚で床から浮かせる | 土間収納、下駄箱の底 | 面に接する時間を減らす |
| 段ボールを置かない | 有機物を減らす | 条件を減らす |
| 温湿度計を置いて記録する | 下駄箱の中と玄関 | 効果を比べる基準になる |
| 除湿剤を使う | 製品の表示に従う | 容量と交換の目安を確認する |
7. よくある質問
Q. 下駄箱のカビを取っても、また生えます。
A. 条件が変わっていない手がかりです。まず、水の持ち込み(濡れた靴・傘)、空気の動き(扉を閉めたまま)、面の温度(背板が外壁に接している)の3つを順に確かめてください。温湿度計を入れて、室内と比べると状態が見えます。文部科学省のカビ対策マニュアルは、相対湿度を常に60%以下に保つことを案内しています。
Q. 玄関の土間が夏に濡れます。
A. コンクリートは熱容量が大きく、温まりにくい材料です。夏、外気より土間のほうが冷たくなることがあり、湿った空気が触れると面に水がつきます。第14回で見た夏型結露と同じ理屈です。外気が湿っている時期(東京の平年値で6月75%、7月76%)に扉を開け放つと、かえって水がつくことがあります。
Q. 玄関に除湿機を置けば改善しますか。
A. 空気の水蒸気量を下げる方向には働きます。ただし、玄関は扉の開閉で外気が入る場所です。除湿の効きは、扉を閉めているあいだに限られます。持ち込む水を減らすことと、収納の中の空気を動かすことのほうが、手のつけやすい対処になります。
Q. シューズクロークに換気扇をつけたほうがよいですか。
A. 空気を動かす手段のひとつです。ただし、外気を取り入れる形だと、湿った時期には湿気も入ります(第9回・第14回)。室内側の空気を循環させる方法を含めて、設計した会社や工務店に相談してください。
Q. 玄関の壁の下部にシミが出ています。
A. 土間に接する壁の下部は、冷えやすい場所です。ただし、外から入った雨水(第17回)や、外構からの跳ね返りの可能性もあります。いつ出るか(冬か、雨の翌日か、季節に関係ないか)を記録し、外側の同じ位置の状態(外壁の下端、地面の高さ、排水)もあわせて確かめてください。
8. まとめ
- 居室の床は基礎で持ち上げられているが、土間は地面のすぐ上にある
- 施行令22条は床の高さを地面から45cm以上としている(コンクリート等で覆う場合は適用しない)
- 土間のコンクリートは温まりにくく、夏は空気より冷たくなることがある
- 下駄箱・土間収納は、濡れたものの持ち込み・動かない空気・冷たい面がそろいやすい
- 勝手口は使用頻度が低く、北側にあることが多いため乾きにくい
- ウッドデッキやテラスの設置で、換気口と水切りの下をふさがない
手に負えないカビは、お近くのカビバスターズへ
自分で試して2回落ちない、面積が広い、壁や床の内側から出ている、においが消えない――そうしたカビは、原因調査から入る専門業者の領域です。MIST工法®カビバスターズは全国に加盟店があります。まずはお近くの店舗、または本部にご相談ください。
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連載「建物の構造とカビ ― 床下・壁の中・小屋裏」全31回
全体像(第1〜3回)
- 第1回(10/1)家のカビは見えている場所だけではない|床下・壁の中・小屋裏で起きていること
- 第2回(10/2)建物に水が来る4つの出所|雨・地面・室内・配管
- 第3回(10/3)家の断面で見るカビ|基礎から屋根まで、湿気が通る道
床下・基礎(第4〜10回)
- 第4回(10/4)床下のカビはなぜ起きるのか|地面からの水蒸気と床下の温度
- 第5回(10/5)床下換気の基準|施行令22条の換気孔と、ベタ基礎の考え方
- 第6回(10/6)防湿コンクリート・防湿フィルム|「地面を覆う」とは何をしていることか
- 第7回(10/7)床断熱と基礎断熱、カビ目線でどう違うか
- 第8回(10/8)床下の点検で何を見るか|におい・白い粉・土台の色・水の跡
- 第9回(10/9)床下調湿材・床下換気扇は効くのか|公的資料で確認できること
- 第10回(10/10)シロアリとカビ|同じ水分条件で起きる2つの被害
壁の中・外壁(第11〜18回)
- 第11回(10/11)壁の中で何が起きているのか|内部結露という現象
- 第12回(10/12)通気層の役割|壁の中の湿気を外へ出す仕組み
- 第13回(10/13)防湿層はなぜ室内側にあるのか
- 第14回(10/14)冬型結露と夏型結露|壁の中で逆向きに起きる
- 第15回(10/15)断熱材の種類とカビ|繊維系・発泡系で水分の振る舞いが違う
- 第16回(10/16)石膏ボードと壁紙|下地までカビが入るとき
- 第17回(10/17)外壁のひび割れ・シーリング|雨が壁の中に入る経路
- 第18回(10/18)サイディングとモルタル|外壁材で変わる水の逃げ方
小屋裏・屋根(第19〜22回)
- 第19回(10/19)小屋裏のカビ|なぜ夏と冬の両方で起きるのか
- 第20回(10/20)小屋裏換気の基準|方式で変わる換気孔の面積
- 第21回(10/21)屋根の雨漏りとカビ|「滴る」前に起きていること
- 第22回(10/22)天井裏の配管・ダクト|結露する場所が決まっている理由
開口部・水まわり(第23〜27回)
- 第23回(10/23)窓まわりの結露が壁の中に入るとき|サッシ下部と窓台
- 第24回(10/24)玄関・勝手口・土間|床のレベル差と冷える面(この記事)
- 第25回(10/25)浴室・ユニットバスの裏側|点検口から見えるもの
- 第26回(10/26)キッチン・洗面台の下|配管まわりの小さな漏れ
- 第27回(10/27)24時間換気と家全体の空気の流れ|負圧・正圧とカビ (公開予定)
点検と改修(第28〜31回)
- 第28回(10/28)見えない場所のカビを疑うサイン|におい・シミ・床鳴り・建具の動き (公開予定)
- 第29回(10/29)点検口はどこにあるか|自分で開けてよい場所・開けない場所 (公開予定)
- 第30回(10/30)調査で何が分かるか|含水率計・サーモグラフィ・ファイバースコープ (公開予定)
- 第31回(10/31)断熱改修・リフォームでカビを増やさないために (公開予定)
参考資料(一次情報)
- 国土技術政策総合研究所「木造住宅外皮の換気・通気計画ガイドライン(案)」 小屋裏換気孔の有効面積、外壁通気層15mm以上、床下換気孔300cm²/4m以内
- 国土技術政策総合研究所「省エネと結露」 夏型結露の定義、気密・換気・通気の役割分担、材料の熱伝導率
- 住宅金融支援機構【フラット35】在来木造の耐久性基準 基礎高さ40cm以上、防湿コンクリート6cm以上、防湿フィルム0.1mm以上
- 国土交通省「住宅の品質確保の促進等に関する法律の概要」 10年間の瑕疵担保責任の対象部分、住宅性能表示基準10分野33項目
- 文部科学省「カビ対策マニュアル」基礎編 水分活性Aw0.6以下、相対湿度60%以下、色素の除去は困難
- 厚生労働省「建築物環境衛生管理基準」 相対湿度40〜70%、温度18〜28℃
- 建築基準法施行令 第22条(居室の床の高さ及び防湿方法) 床の高さは直下の地面から床の上面まで45cm以上。床下をコンクリート等で覆う場合は適用しない
- 公益社団法人日本しろあり対策協会「防除施工標準仕様書」 玄関ポーチなど外周部のコンクリート部分は建築物の一部と見なす
- 気象庁 東京の月別平年値(1991〜2020年) 6月の平均相対湿度75%、7月76%
