執筆:MIST工法®カビバスターズ本部(株式会社せら) 本記事の数値は公的機関の公開資料にもとづいています。
第25回は浴室です。家のなかでいちばん水を使う場所ですが、この記事で扱うのは、洗い場や壁のカビではありません。
ユニットバスの裏側です。浴槽と壁パネルの外側には、基礎と柱と土台があります。そこに点検口からアクセスできる家があります。
浴室の表面のカビは目に入りますが、裏側は開けないと見えません。そして、裏側で起きていることのほうが、建物にとっては大きいことがあります。
この記事で分かること
- ユニットバスと在来浴室の違い
- なぜ浴室の裏側が問題になるのか
- 浴室の点検口はどこにあるか
- 点検口から見るもの
- 浴室の防水について公的基準が示していること
1. 結論:裏側は「湿った外」に近い
- ユニットバスは、防水された箱です。その内側の水は外へ出ない設計になっています
- ただし、水蒸気は別です。扉の隙間、点検口、配管の貫通部から、裏側へ回ることがあります
- 裏側には、土台・柱・基礎があります。木部が湿った状態が続けば、カビと腐朽の条件になります(第10回)
| ユニットバス | 在来浴室(タイル張りなど) | |
|---|---|---|
| つくり方 | 工場で作った部材を現場で組む | 現場で防水し、タイル等を張る |
| 防水 | ユニットそのものが防水の箱 | 防水層を現場で施工する |
| 水の漏れ | 設計どおりなら箱の外へ出ない | 防水層の劣化で漏れることがある |
| 裏側の空間 | ユニットと躯体のあいだに空間がある | 構法による |
| 点検口 | 設けられていることが多い | 構法による |
| カビの出かた | 内側は表面、裏側は木部 | 目地・タイルの裏まで進むことがある |
2. 公的基準が示していること
住宅金融支援機構の【フラット35】在来木造の耐久性基準は、浴室の防水措置について次の選択肢を示しています。
| 選択肢 | 内容 |
|---|---|
| 防水紙等による措置 | 浴室の壁の下地に防水紙等を用いる |
| 耐水性下地材 | シージングせっこうボード等の耐水性下地材を用いる |
| ユニット化 | ユニットバス等、防水上有効な措置が講じられたものとする |
また、同基準は地面からの高さ1m以内の部分に防腐・防蟻の措置を求めています。建築基準法施行令第49条第2項も、地面から1m以内の柱・筋かい・土台に有効な防腐措置と、必要に応じた防蟻措置を定めています(第10回)。
用語のたしかめ
浴室は、1階にある場合、この「地面から1m以内」の高さにあたる部分を多く含みます。水を使う場所と、防腐・防蟻が求められる高さが重なっている、ということです。
3. 浴室の点検口はどこにあるか
| 位置 | 見え方 | 何が見えるか |
|---|---|---|
| 浴槽の側面(エプロン) | 浴槽の外側のパネル。外せるものがある | 浴槽の下、排水、床の裏 |
| 洗面所の床下収納 | 洗面所の床にある四角い蓋 | 浴室の床下、配管 |
| 浴室の天井 | 天井の点検口(四角い蓋) | ユニットの上、配管、換気ダクト |
| 洗面所の壁 | 壁の点検口 | 配管の立ち上がり |
| 外部(基礎の側) | 基礎に設けられた開口 | 浴室下の基礎まわり |
開ける前に確認してください
- 浴槽のエプロンは、取り外せるものと、そうでないものがあります。無理に外すと破損します。取扱説明書を確認してください
- 天井の点検口は、脚立に乗る必要があります。浴室の床は滑ります。乾いた状態で、無理のない範囲で
- 点検口を開けたあとは、元どおりに閉めてください。開いたままだと、水蒸気が裏側へ回ります
- 配線・配管に触れないでください
4. 点検口から見るもの
| 見るところ | 見るもの | 考えられること |
|---|---|---|
| 浴槽の下 | 水が溜まっていないか。乾いているか | 排水の漏れ、または結露 |
| 土台・柱の足元 | 色の変化、黒ずみ、もろさ | 湿りが続いた跡(第8回・第10回) |
| 基礎の内側 | 白い粉(白華)、水の跡 | 水が通った跡(第8回) |
| 配管の接続部 | 濡れ、水滴、錆 | 漏れ、または結露(第22回) |
| 断熱材 | 湿り、垂れ下がり | 第15回 |
| 天井の点検口から上 | 換気ダクトの状態、たるみ | 第22回 |
| ユニットと壁のすき間 | 空気がこもっていないか、においがないか | 水蒸気が回っている可能性 |
とくに、土台と柱の足元です。ここは、地面から1m以内という、法令と基準が防腐・防蟻を求めている高さにあたります。色が変わっている、押すとへこむ、といった変化があれば、写真と範囲を記録してください。
5. 水蒸気が裏側へ回る経路
| 経路 | どう回るか | 手のつけやすい対処 |
|---|---|---|
| 浴室の扉の下の通気口 | 洗面所側との空気の出入り | 扉を閉めて換気扇を回す |
| 天井の点検口 | 蓋のすき間から上へ | 蓋がきちんと閉まっているか |
| 配管の貫通部 | 管のまわりのすき間 | 施工時の処理。点検口から確認 |
| ユニットと壁のすき間 | 洗面所側から回り込む | 洗面所の換気も確保する |
| 換気扇のダクト | 排気が漏れる、逆流する | ダクトのたるみ、継ぎ目(第22回) |
| 浴室を使ったあと | 高温多湿の空気が残る | 換気扇を運転し続ける |
| 入浴後の運用 | 内容 | 考え方 |
|---|---|---|
| 換気扇を回す | 入浴後も運転を続ける | 取扱説明書の推奨時間を確認 |
| 扉は閉める | 扉を開けると洗面所へ湿気が回る | 換気扇の効きも変わる |
| 窓は開けない(換気扇がある場合) | 窓を開けると換気扇の流れが乱れることがある | 機種の説明書に従う |
| 壁と床の水を切る | スクイジー、タオル | 残る水を減らす |
| 最後にお湯をかけるか冷水か | 製品・素材の説明書に従う | 温度で汚れの落ち方が変わる |
| 浴槽の蓋 | 溜めたまま蓋を開けておかない | 水蒸気が出続ける |
6. よくある質問
Q. 浴室の天井や壁のカビは、市販のカビ取り剤で取ってよいですか。
A. 製品の注意表示に従ってください。塩素系のものは換気が要り、酸性の製品と混ぜてはいけません。天井に噴霧すると顔に落ちてくるため、柄付きの道具に薬剤を含ませて塗る方法が案内されていることがあります。文部科学省のカビ対策マニュアルは、色素の除去は困難としています。目地やパッキンに入った色素は、残ることがあります。
Q. 浴室の点検口を開けたら、木が黒ずんでいました。
A. 湿った状態が続いた手がかりです。範囲をメジャーで測り、写真を撮ってください。押してみて柔らかい、へこむ場合は、木部の中まで進んでいる可能性があります。水の出所(排水の漏れか、結露か)を切り分けるため、季節と天気との関係も記録してください(第14回)。判断がつかない場合は、調査(第30回)で範囲を絞る方法があります。
Q. 浴室の換気扇は、24時間回しっぱなしでよいですか。
A. 機種によって、24時間換気に対応したものと、そうでないものがあります。取扱説明書を確認してください。国土技術政策総合研究所は、24時間換気の電源を切らないことを案内しています。また、フィルターに埃が溜まると風量が落ちるため、定期的な清掃が要ります。
Q. 在来浴室をユニットバスに替えると、カビは減りますか。
A. 浴室内の表面については、目地が減り、掃除がしやすくなることが多くあります。ただし、裏側の状態は、改修工事のときに確かめるべきものです。改修は、裏側を見られる数少ない機会です。土台・柱の状態を写真に残してもらってください。
Q. 洗面所の床がふわふわします。
A. 床下地が水分を含んでいる可能性があります。浴室からの水、洗面台下の配管(第26回)、洗濯機の給排水など、いくつかの出所が考えられます。範囲を測り、いつから、どの範囲で起きているかを記録してください。踏み抜きの危険があるため、その上に重いものを置かないでください。
7. まとめ
- ユニットバスは防水された箱。ただし水蒸気は扉・点検口・貫通部から裏へ回る
- 裏側には土台・柱・基礎がある。地面から1m以内という、防腐・防蟻が求められる高さと重なる
- 【フラット35】は浴室の防水として、防水紙等・シージングせっこうボード等・ユニット化を示している
- 点検口は、浴槽のエプロン・洗面所の床・浴室の天井・洗面所の壁にあることがある
- 見るのは、浴槽の下・土台と柱の足元・基礎の内側・配管の接続部
- 入浴後は扉を閉めて換気扇を回す。開けたままだと湿気が回る
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連載「建物の構造とカビ ― 床下・壁の中・小屋裏」全31回
全体像(第1〜3回)
- 第1回(10/1)家のカビは見えている場所だけではない|床下・壁の中・小屋裏で起きていること
- 第2回(10/2)建物に水が来る4つの出所|雨・地面・室内・配管
- 第3回(10/3)家の断面で見るカビ|基礎から屋根まで、湿気が通る道
床下・基礎(第4〜10回)
- 第4回(10/4)床下のカビはなぜ起きるのか|地面からの水蒸気と床下の温度
- 第5回(10/5)床下換気の基準|施行令22条の換気孔と、ベタ基礎の考え方
- 第6回(10/6)防湿コンクリート・防湿フィルム|「地面を覆う」とは何をしていることか
- 第7回(10/7)床断熱と基礎断熱、カビ目線でどう違うか
- 第8回(10/8)床下の点検で何を見るか|におい・白い粉・土台の色・水の跡
- 第9回(10/9)床下調湿材・床下換気扇は効くのか|公的資料で確認できること
- 第10回(10/10)シロアリとカビ|同じ水分条件で起きる2つの被害
壁の中・外壁(第11〜18回)
- 第11回(10/11)壁の中で何が起きているのか|内部結露という現象
- 第12回(10/12)通気層の役割|壁の中の湿気を外へ出す仕組み
- 第13回(10/13)防湿層はなぜ室内側にあるのか
- 第14回(10/14)冬型結露と夏型結露|壁の中で逆向きに起きる
- 第15回(10/15)断熱材の種類とカビ|繊維系・発泡系で水分の振る舞いが違う
- 第16回(10/16)石膏ボードと壁紙|下地までカビが入るとき
- 第17回(10/17)外壁のひび割れ・シーリング|雨が壁の中に入る経路
- 第18回(10/18)サイディングとモルタル|外壁材で変わる水の逃げ方
小屋裏・屋根(第19〜22回)
- 第19回(10/19)小屋裏のカビ|なぜ夏と冬の両方で起きるのか
- 第20回(10/20)小屋裏換気の基準|方式で変わる換気孔の面積
- 第21回(10/21)屋根の雨漏りとカビ|「滴る」前に起きていること
- 第22回(10/22)天井裏の配管・ダクト|結露する場所が決まっている理由
開口部・水まわり(第23〜27回)
- 第23回(10/23)窓まわりの結露が壁の中に入るとき|サッシ下部と窓台
- 第24回(10/24)玄関・勝手口・土間|床のレベル差と冷える面
- 第25回(10/25)浴室・ユニットバスの裏側|点検口から見えるもの(この記事)
- 第26回(10/26)キッチン・洗面台の下|配管まわりの小さな漏れ
- 第27回(10/27)24時間換気と家全体の空気の流れ|負圧・正圧とカビ (公開予定)
点検と改修(第28〜31回)
- 第28回(10/28)見えない場所のカビを疑うサイン|におい・シミ・床鳴り・建具の動き (公開予定)
- 第29回(10/29)点検口はどこにあるか|自分で開けてよい場所・開けない場所 (公開予定)
- 第30回(10/30)調査で何が分かるか|含水率計・サーモグラフィ・ファイバースコープ (公開予定)
- 第31回(10/31)断熱改修・リフォームでカビを増やさないために (公開予定)
参考資料(一次情報)
- 国土技術政策総合研究所「木造住宅外皮の換気・通気計画ガイドライン(案)」 小屋裏換気孔の有効面積、外壁通気層15mm以上、床下換気孔300cm²/4m以内
- 国土技術政策総合研究所「省エネと結露」 夏型結露の定義、気密・換気・通気の役割分担、材料の熱伝導率
- 住宅金融支援機構【フラット35】在来木造の耐久性基準 基礎高さ40cm以上、防湿コンクリート6cm以上、防湿フィルム0.1mm以上
- 国土交通省「住宅の品質確保の促進等に関する法律の概要」 10年間の瑕疵担保責任の対象部分、住宅性能表示基準10分野33項目
- 文部科学省「カビ対策マニュアル」基礎編 水分活性Aw0.6以下、相対湿度60%以下、色素の除去は困難
- 厚生労働省「建築物環境衛生管理基準」 相対湿度40〜70%、温度18〜28℃
- 建築基準法施行令 第49条(外壁内部等の防腐措置等) 第2項:地面から1m以内の柱・筋かい・土台に有効な防腐措置、必要に応じて防蟻措置
