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家のカビは見えている場所だけではない|床下・壁の中・小屋裏で起きていること

執筆:MIST工法®カビバスターズ本部(株式会社せら) 本記事の数値は公的機関の公開資料にもとづいています。

ここまでの連載では、見えているカビをどう落とすかを扱ってきました。10月からは向きを変えて、見えない場所の話をします。床下、壁の中、小屋裏です。

「掃除してもすぐ生える」「においだけが消えない」「同じ場所に何度も出る」――こうした訴えの一部は、表面ではなく建物の内側に水が回っていることで起きます。表面だけを何度拭いても、水の出所が内側にあるかぎり同じことが繰り返されます。

この連載は全31回で、基礎から屋根まで建物を下から順に上がっていきます。第1回は入口として、建物のどこが濡れやすいのか、そして見えない場所を疑うのはどういうときかを整理します。

この記事で分かること

  • 見えているカビと、見えない場所のカビの違い
  • 建物の中でカビが出やすい3つの層(床下・壁の中・小屋裏)とその理由
  • 「内側を疑うべき」7つのサイン
  • 自分で確かめられる範囲と、そこから先の線引き
  • 全31回で何を扱うか

1. 結論:表面のカビと、内側のカビは別の問題

図1 床下・壁の中・小屋裏。それぞれ水の来かたと、乾きにくい理由が違う

最初に結論を3つ挙げます。

  1. 表面のカビは「部屋の空気」の問題、内側のカビは「建物の水」の問題。前者は湿度と換気で動きますが、後者は雨・地面・配管など建物側の水が関わります
  2. 内側は乾きにくい。国土技術政策総合研究所は、部位内結露について「発見が遅れるうえに乾燥しにくく最も厄介な水分供給現象の一つ」としています
  3. 内側は自分では見えない。だからサインで疑い、点検口や調査で確かめるという順番になります

この3つを押さえると、「掃除しても再発する」という状況の見え方が変わります。掃除が足りないのではなく、掃除では届かない場所に水があるかもしれない、という仮説が立つからです。

見えている場所と、見えない場所の比較

表1 表面のカビと内側のカビの違い
見えている場所(表面) 見えない場所(内側)
代表的な場所 浴室の目地、窓のサッシ、壁紙の表面、押入れの中 床下、壁の中(断熱材と外壁のあいだ)、小屋裏、天井裏
水の出所 室内の湿気、結露、こぼした水 雨、地面からの水蒸気、配管の漏れ、内部結露
気づき方 見える。においも近い におい、シミ、建具の動き、床鳴りなど間接的なサイン
乾く速さ 換気すれば乾く 空気が動きにくく、乾きにくい
自分でできること 拭き取り・薬剤・換気 点検口からの目視、記録。処置は素材と範囲による
放置したときに進むもの 範囲が広がる。においが強くなる 木材の含水率が上がり、腐朽菌やシロアリの条件に近づく

右の列に共通するのは、水が建物の側から来ていて、空気が動かないという点です。文部科学省のカビ対策マニュアルは、カビが利用できるのは自由水だけであり、水分活性Aw0.6以下では生育できないとしています。裏を返せば、内側に水が回って材料が濡れた状態が続くと、条件はそろってしまいます。

2. 建物の3つの層|それぞれの事情

① 床下|地面が近く、夏に冷える

床下は地面のすぐ上にあります。地面からは水蒸気が上がってきます。加えて、床下は夏に周囲より冷たくなる場所です。外の湿った空気が入ってきて、冷たい面に触れると、その面で結露します。

国土技術政策総合研究所の「省エネと結露」は、夏型結露のひとつとして「室内をエアコンで冷房した際、夏季に水分を大量に含んだ屋外空気が温度の低い床下で水滴になる現象」を挙げています。梅雨から夏にかけて床下の換気口を開けておけば乾く、とは限らないのはこのためです。

② 壁の中|湿気が通り抜ける途中で止まる

壁は、室内側から順に、内装材・防湿層・断熱材・面材・通気層・外装材と重なっています。室内の水蒸気は壁の中へ入ろうとし、外からは雨が入ろうとします。どちらの水も、外へ抜ける道がなければ壁の中に留まります。

国土技術政策総合研究所のガイドラインは、通気層の役割を「外部からの雨水や構造材の水分、そして室内からの水蒸気などを外気に放出し外皮内に湿気を滞留させないようにして木材の乾燥を促す」ことと説明し、なかでも「一次防水層である外装材から浸入する雨水を外皮の外へ逃がし、躯体内への雨水浸入リスクを軽減することが最も重要な役割」としています。

③ 小屋裏|温度差が大きく、空気がこもる

小屋裏(屋根裏)は、屋根に日が当たれば非常に高温になり、夜は冷えます。温度の振れ幅が家の中でもっとも大きい場所です。冬は室内から上がってきた水蒸気が、冷えた野地板の裏で結露することがあります。

同じガイドラインは、小屋裏換気孔の役割を「結露が起こるような場合に湿気を速やかに外気へ放出し小屋裏内部の乾燥状態を保つ」ことと説明しています。換気孔があること自体ではなく、入口と出口がそろって空気が流れることが要点です。

図2 水の出所・乾きにくさ・見つけにくさは層ごとに違う
表2 3つの層+設備まわりの事情
層 主な水の出所 乾きにくい理由 見つかるきっかけ
床下 地面からの水蒸気、雨水の流入、配管の漏れ、夏型結露 地面に近く、空気が動きにくい におい、床鳴り、床のたわみ、点検口を開けたとき
壁の中 外壁からの雨水浸入、内部結露、配管の漏れ 通気層がない・ふさがっていると抜け道がない 壁紙のシミ・浮き、同じ場所の再発
小屋裏 室内からの水蒸気、雨漏り、屋根の結露 空気がこもりやすく、温度差が大きい 天井のシミ、点検口を開けたとき、屋根工事のとき
天井裏の設備 冷たい配管・ダクトの表面結露 保温材が切れている部分に集中する 天井の丸いシミ、ぽたぽたという音

3. 内側を疑う7つのサイン

内側は見えないので、間接的なサインから疑うことになります。1つだけでは判断できませんが、複数が重なるときは内側を確かめる価値があります。

表3 内側を疑う7つのサインと、次にすること
サイン 何を示している可能性があるか 次にすること
掃除しても同じ場所に再発する 表面ではなく下地や裏側に水がある 同じ場所か記録し、範囲が広がっているか見る
においだけが消えない 見えていない場所に発生源がある いつ強いかを記録し、温湿度と重ねる
壁紙が浮く・波打つ・シミが出る 下地が濡れている 触って冷たくないか、柔らかくないかを確かめる
床が沈む・鳴る 床下の湿気で下地が傷んでいる 床下点検口の有無を確かめる
建具(ドア・引き戸)が動きにくい 木部が水分を含んで動いている 季節で戻るか、戻らないかを見る
雨の翌日に強くなる 雨水が入る経路がある 外壁・屋根・窓まわりの外側を見る
特定の部屋・特定の季節だけ 温度差か、その部屋固有の水の出所がある 間取りと方位、設備の位置を確かめる

文部科学省のカビ対策マニュアルは、発生日時・場所・状態を写真とともに記録することを案内しています。記録は、あとで原因を切り分けるときの材料になります。

4. 自分で確かめられる範囲

図3 開けてよい場所・触らない場所・依頼する範囲
表4 自分で確かめられる範囲
範囲 内容 自分で
外から見る 外壁のひび、シーリングの切れ、屋根の様子、基礎の換気口がふさがっていないか できる
点検口から見る 床下点検口・天井点検口を開けて、写真を撮る 場所と状態による
においと記録 いつ・どこで強いか、雨との関係を書き留める できる
温湿度を測る 部屋と、疑っている場所の近くで測る できる
床下に入る もぐって奥まで見る 推奨しない(後述)
壁を開ける 壁紙をはがす、石膏ボードを切る 推奨しない
断熱材を触る 断熱材をめくる、抜く 推奨しない

床下にもぐる前に

  • 床下は狭く、暗く、埃と胞子が舞います。文部科学省のカビ対策マニュアルは、生きているカビはカビ毒、死んでいてもアレルゲンになるとして呼吸用保護具の着用を案内しています
  • 配管・配線があり、断熱材や防湿フィルムを踏み抜くと、あとから水の通り道をつくってしまうことがあります
  • 見えたものの意味(シミが古いのか新しいのか、腐朽なのかカビなのか)は、写真だけでは判断が難しい場面が多くあります
  • 点検口を開けて手前を写真に撮るところまでにして、その先は調査を依頼するのが現実的です

5. 「水の出所」を先に決める

内側のカビで、もっとも大事なのは水の出所を先に決めることです。出所が残っていれば、薬剤で表面を処理しても、また同じ場所が濡れます。

出所は大きく4つに分けられます。詳しくは次回(第2回)で扱いますが、先に並べておきます。

表5 建物に水が来る4つの出所
出所 入ってくる場所 特徴
雨 屋根、外壁、開口部まわり 降った日・翌日に変化する。国交省の品確法では屋根・外壁・開口部が「雨水の浸入を防止する部分」とされ、新築は10年間の瑕疵担保責任の対象
地面 床下、基礎まわり 季節でゆっくり動く。防湿措置の有無で大きく変わる
室内 生活で出る水蒸気が壁・天井の中へ 冬に多い。防湿層と換気で決まる
配管 給水・給湯・排水・空調のドレン 場所が限られる。少量が長く続くことが多い

6. この連載で扱うこと(全31回)

10月は、建物を下から上へ順に見ていきます。

表6 全31回の構成
ブロック 回 扱うこと
全体像 第1〜3回 見えない場所の考え方、水の4つの出所、家の断面で見る湿気の道
床下・基礎 第4〜10回 床下の結露、換気の基準、防湿、床断熱と基礎断熱、点検、調湿材、シロアリ
壁の中・外壁 第11〜18回 内部結露、通気層、防湿層、冬型と夏型、断熱材、石膏ボード、ひび割れ、外壁材
小屋裏・屋根 第19〜22回 小屋裏の結露、換気の基準、雨漏り、天井裏の配管・ダクト
開口部・水まわり 第23〜27回 窓まわり、玄関・土間、浴室の裏、シンク下、24時間換気と空気の流れ
点検と改修 第28〜31回 サイン、点検口、調査の方法、断熱改修で失敗しないために

7. よくある質問

Q. 築年数が浅い家でも、内側にカビは出ますか。

A. 出ることがあります。国土技術政策総合研究所は、UA値は計算値であり、施工時に隙間が多いと所定の性能を発揮できず結露の要因になり得ると指摘しています。設計上の数値と、実際にできあがった建物は同じとは限りません。新しさよりも、水の出所と乾く道があるかどうかで見るほうが確かです。

Q. 床下点検口が見当たりません。どこにありますか。

A. 多くは洗面所・台所・収納の床にあります。畳の下やユニットバスの下にある場合もあります。見当たらないときは、建てた会社や管理会社に図面を確認するのが早道です。第29回であらためて扱います。

Q. 内側のカビは、薬剤で処理すれば終わりますか。

A. 水の出所が残っていると、同じ場所が繰り返し濡れます。文部科学省のカビ対策マニュアルも、環境を改善しない限りカビ被害は繰り返されるとしています。処置の前に、どこから水が来ているかを決める工程が要ります。

Q. 賃貸でも自分で点検口を開けてよいですか。

A. 構造や設備に触れる行為は、契約で扱いが分かれます。開ける前に管理会社へ連絡し、状況を伝えて記録を残すのが確実です。国土交通省の原状回復ガイドラインは、修繕が必要になった場合に賃借人が通知する必要があるとしており、通知を怠って被害が生じた場合は損害賠償を求められる可能性があるとしています。

8. まとめ

  • 表面のカビは部屋の空気の問題、内側のカビは建物の水の問題
  • 内側で出やすいのは床下・壁の中・小屋裏の3つ。水の来かたも、乾きにくい理由も層ごとに違う
  • 見えないので、におい・シミ・建具の動きなどのサインで疑い、点検口と記録で確かめる
  • 床下にもぐる・壁を開けるのは推奨しない。点検口から手前を写真に撮るところまで
  • 処置より先に、水の出所(雨・地面・室内・配管)を決める

手に負えないカビは、お近くのカビバスターズへ

自分で試して2回落ちない、面積が広い、壁や床の内側から出ている、においが消えない――そうしたカビは、原因調査から入る専門業者の領域です。MIST工法®カビバスターズは全国に加盟店があります。まずはお近くの店舗、または本部にご相談ください。

連載「建物の構造とカビ ― 床下・壁の中・小屋裏」全31回

全体像(第1〜3回)

床下・基礎(第4〜10回)

壁の中・外壁(第11〜18回)

小屋裏・屋根(第19〜22回)

開口部・水まわり(第23〜27回)

点検と改修(第28〜31回)

参考資料(一次情報)