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建物に水が来る4つの出所|雨・地面・室内・配管

執筆:MIST工法®カビバスターズ本部(株式会社せら) 本記事の数値は公的機関の公開資料にもとづいています。

前回、内側のカビは「建物の水」の問題だと書きました。では、その水はどこから来るのでしょうか。

カビの処置で失敗がいちばん多いのは、水の出所を決めないまま表面を処理したときです。出所が残っていれば、同じ場所がまた濡れます。文部科学省のカビ対策マニュアルも、環境を改善しない限りカビ被害は繰り返されるとしています。

建物に水が来る道は、大きく4つしかありません。雨・地面・室内・配管です。この4つは、出方も、季節の動き方も、直し方も違います。第2回は、この切り分けを扱います。

この記事で分かること

  • 水の4つの出所と、それぞれの特徴
  • 「いつ濡れるか」で出所を切り分ける方法
  • 4つの出所を見分けるチェックリスト
  • 出所ごとに、誰に相談するのが早いか
  • 記録の取り方(あとで効いてくる3項目)

1. 結論:4つのうちどれかを先に決める

図1 雨・地面・室内・配管。入口も、季節の動きも違う
  1. 出所は4つ。雨(屋根・外壁・開口部から)、地面(床下から)、室内(生活で出る水蒸気)、配管(給水・給湯・排水・ドレン)
  2. 切り分けの最短ルートは「いつ濡れるか」。雨の翌日なのか、冬なのか、夏なのか、いつでもなのか
  3. ひとつに絞れないことがある。2つ以上が重なっている場合も珍しくないので、疑いを1つに決め打ちせず、消去法で進める
表1 4つの出所の早見表
出所 入ってくる場所 いつ濡れるか 直すのは誰の領域か
雨 屋根、外壁、バルコニー、窓まわり、換気フードまわり 降った日〜翌日。風向きのある雨で強く出ることがある 屋根・外壁の工事店。新築10年以内は施工した会社
地面 床下(基礎の内側)、土間、半地下 梅雨〜夏に強い。長雨のあと、季節でゆっくり動く 基礎・床下の工事店、防湿工事
室内 壁・天井の中(水蒸気が入り込む)、窓、押入れ 冬が中心。加湿・調理・入浴・洗濯物と連動 断熱・気密・換気の見直し。生活側の調整も効く
配管 床下、壁の中、天井裏、シンク下、洗濯機まわり 季節に関係なく続く。使ったときに増える 水道工事店、設備工事店

国土交通省の資料によれば、住宅の品質確保の促進等に関する法律では、木造戸建住宅の「雨水の浸入を防止する部分」として屋根・外壁・開口部が挙げられ、新築住宅ではこれらに10年間の瑕疵担保責任が定められています。雨の疑いが強く、築10年以内であれば、まず施工した会社に連絡するのが筋道です。

2. 出所① 雨

雨は、降った日と翌日に変化が出るのがいちばんの手がかりです。屋根から入ることも、外壁から入ることも、窓のまわりから入ることもあります。

雨が入りやすい場所

表2 雨が入りやすい7か所
場所 入りやすい理由
屋根の谷・棟・板金の継ぎ目 水が集まる場所で、材の継ぎ目がある
外壁のひび割れ 毛細管現象で吸い込まれ、壁の中へ回る
シーリング(コーキング)の切れ 外壁材の目地や、窓まわりの防水が切れる
窓・サッシの上下 取り合いが多く、防水の納まりが難しい
バルコニーの床・立ち上がり 水がたまる面で、防水層に切れ目ができやすい
換気フード・配管の貫通部 壁に穴を開けている部分で、まわりの処理が要る
屋根と外壁の取り合い 2つの材が出会う場所で、水が回り込みやすい

国土技術政策総合研究所のガイドラインは、外壁通気層について「一次防水層である外装材から浸入する雨水を外皮の外へ逃がし、躯体内への雨水浸入リスクを軽減することが最も重要な役割」としています。外装材は水を完全には止めない前提で、入った水を逃がす仕組みが用意されているということです。逃がす道がふさがれていると、入った水が壁の中に残ります。

雨を疑うときに見るもの

  • 雨の翌日にシミが濃くなるか。写真を日付つきで撮って比べる
  • 風向きのある雨のときだけ出るか。特定の方角の壁から入っている手がかりになる
  • シミの形。上から下へ流れた跡か、面全体がぼんやり濡れているか
  • 外側の該当箇所。室内のシミの真上・真横にあたる外壁や屋根を、地上から見上げて撮る

3. 出所② 地面

図2 地面からの水蒸気は、季節でゆっくり動く

床下は地面のすぐ上です。地面からは水蒸気が上がってきます。これを止めるのが防湿の措置です。

住宅金融支援機構の【フラット35】在来木造の耐久性基準は、床下地面の防湿措置として厚さ6cm以上のコンクリートを打設するか、厚さ0.1mm以上の防湿フィルムを敷きつめることを求めています。また、基礎については地面から基礎の上端または地面から土台下端までの高さを40cm以上としています。

建築基準法施行令第22条は、最下階の居室の床が木造の場合、床の高さを直下の地面から床の上面まで45cm以上とし、外壁の床下部分には壁の長さ5m以下ごとに面積300cm²以上の換気孔を設けてねずみの侵入を防ぐ設備をすることを定めています。ただし床下をコンクリート、たたきその他これらに類する材料で覆う場合は適用しないとされています。

用語のたしかめ

つまり、床下の湿気対策には「地面を覆って水蒸気を止める」方向と、「空気を通して乾かす」方向の2つがあり、法令も基準も両方を扱っています。どちらの家なのかで、見るところが変わります。詳しくは第5回・第6回で扱います。

表3 地面を疑うときの手がかり
見るところ 地面が出所である手がかり
季節 梅雨〜夏に強く、冬はおさまる
場所 1階の床に近い部分、床下に面した収納、土間まわり
床下の地面 つねに湿っている。触ると冷たく、色が濃い
防湿の有無 土がむき出しである。フィルムが破れている・めくれている
基礎の換気口 ふさがれている、物が置かれている、植栽で埋まっている
敷地 建物より高い土地が隣接している。雨水が建物側へ流れてくる

4. 出所③ 室内

生活そのものが水蒸気を出します。調理、入浴、洗濯物、加湿、そして人の呼吸です。この水蒸気が壁や天井の中へ入り込み、冷たい面で結露するのが内部結露です。第11回であらためて扱います。

国土技術政策総合研究所の「省エネと結露」は、開放型の暖房器具について灯油1Lの燃焼で水蒸気1.13kgが放出されるとし、頻繁な換気が必要だとしています。一方、エアコンや床暖房は一般に水蒸気を発生させないとしています。暖房のしかたで、室内の水蒸気の量は変わります。

表4 室内で水蒸気が増える場面
室内の水蒸気 増える場面 減らす手
調理 煮る・茹でる・湯を沸かす レンジフードを回す。ふたをする
入浴 浴室のドアを開けたまま、換気を止める 浴室の換気扇を回し続ける。ドアを閉める
洗濯物の室内干し 雨の日、冬場 換気しながら干す。除湿機を併用する
加湿器 設定を高くする、つけっぱなし 上限60%を目安にする(第2回・加湿器の回で既出)
開放型の暖房器具 石油ストーブ・石油ファンヒーター 換気する。可能ならエアコン等に替える
24時間換気の停止 スイッチを切っている 国総研は「24時間換気システムの電源は切らない」としている

室内が出所の場合、冬に強く出て、春になるとおさまるのが典型です。窓の結露が多い家では、壁の中でも同じことが起きている可能性があります。

5. 出所④ 配管

配管からの水は、季節に関係なく続くのが特徴です。量が少ないと気づきにくく、長く続いたあとで床や壁の傷みとして表に出ます。

表5 配管まわりで起きること
配管の種類 起きること 出やすい場所
給水管 接続部のゆるみ、ピンホールからの漏れ 床下、壁の中、シンク下、洗面台下
給湯管 同上。お湯なので蒸気にもなる 床下、壁の中、浴室まわり
排水管 継ぎ目のゆるみ、詰まりによるあふれ シンク下、洗面台下、洗濯機まわり、床下
エアコンのドレン 詰まりによる逆流、勾配不良 室内機の下の壁、天井裏
冷たい配管の表面結露 保温材が切れている部分で結露する 天井裏、床下、パイプスペース

少量が長く続くほど、見つけにくい

  • 床下や壁の中の漏れは、床や壁に出てくるまでに時間がかかります。出てきた時点では、範囲が広がっていることがあります
  • 水道の使用量が急に増えていないか、検針票で前年同月と比べると手がかりになります
  • すべての蛇口を閉めた状態で水道メーターのパイロットが回るかを見る方法もあります。回っていれば、どこかで水が流れています
  • 判断に迷うときは、水道局の指定給水装置工事事業者に相談してください

6. 「いつ濡れるか」で切り分ける

図3 いつ濡れるかを記録すると、出所が絞れる
表6 いつ濡れるかと、疑わしい出所
いつ濡れるか 疑わしい出所 次に見るところ
雨の日・その翌日 雨 屋根・外壁・窓まわり・バルコニー。方角も記録する
梅雨から夏 地面、または夏型結露 床下の地面と換気口。冷房の使い方
冬 室内(内部結露) 窓の結露の量、暖房のしかた、換気の状況
季節に関係なくいつも 配管 水道メーター、シンク下、床下の該当位置
特定の設備を使ったとき 配管、またはその設備 洗濯機・食洗機・浴室・エアコンの使用と重ねる
引っ越し・改修のあとから 施工に起因する可能性 工事内容の記録。施工した会社に連絡する

この表で2つ以上に当てはまることがあります。その場合は両方が起きていると考えて進めるほうが、あとで手戻りが少なくなります。

記録しておく3項目

  1. 日付と天気。その日の天気、前日の天気、風向きのある雨だったか
  2. 場所と範囲。同じ場所から撮った写真。定規やカードを一緒に写すと、大きさの変化が分かります
  3. 温度と湿度。部屋の温湿度と、疑っている場所の近くの温湿度

文部科学省のカビ対策マニュアルは、発生日時・場所・状態を写真とともに記録することを案内しています。相談するときに、この3つがそろっていると話が早くなります。

7. どこに相談するか

表7 出所別の相談先
出所の疑い 相談先 伝えること
雨(築10年以内の新築) 施工した住宅会社・工務店 「雨水の浸入を防止する部分」に該当するか。契約書と保証書を用意する
雨(それ以外) 屋根・外壁の工事店、雨漏り調査を扱う会社 いつから、どの部屋の、どこに出るか。外側の写真
地面 基礎・床下の工事を扱う会社 床下の防湿の有無、換気口の状況、地面の湿り
室内 断熱・気密・換気を扱う会社。カビの範囲が広ければカビ専門業者 窓の結露、暖房と換気のしかた、出る季節
配管 水道局の指定給水装置工事事業者、設備工事店 水道メーターの動き、使用量の変化、濡れる場所
賃貸 管理会社・貸主 発見した日、状況、写真。国交省ガイドラインは修繕が必要な場合の通知を求めている
どれか分からない 原因調査から入る会社 記録した3項目をそのまま渡す

8. よくある質問

Q. 出所が2つ以上あることはありますか。

A. あります。たとえば、雨で外壁から入った水が床下にたまり、そこに地面からの水蒸気が加わるという形です。1つ直しても改善が半分で止まるときは、もう1つ残っていると考えて見直すのが現実的です。

Q. カビを先に取ってはいけませんか。

A. 広がりを抑えるために表面を処置すること自体は問題ありませんが、それで終わりにしないことが大切です。文部科学省のカビ対策マニュアルは、除菌だけでは十分な処置とはならず、環境を改善しない限りカビ被害が繰り返されるとしています。処置と並行して、出所を決める工程を進めてください。

Q. 水道メーターで漏れが分かると聞きました。どう見ますか。

A. 家じゅうの蛇口を閉め、トイレや給湯器も止めた状態で、メーターのパイロット(小さな回転する部品)を見ます。回っていればどこかで水が流れています。ただし、この確認だけで場所までは分かりません。回っていた場合は水道局の指定給水装置工事事業者に連絡してください。

Q. 築何年から心配したほうがよいですか。

A. 年数で決まるものではありません。国土技術政策総合研究所は、UA値は計算値であり、施工時に隙間が多いと所定の性能を発揮できず結露の要因になり得ると指摘しています。年数よりも、出ているサインと、水の出所があるかどうかで見てください。

9. まとめ

  • 建物に水が来る道は、雨・地面・室内・配管の4つ
  • 切り分けの最短ルートは「いつ濡れるか」。雨の翌日/梅雨と夏/冬/いつも、で疑う先が変わる
  • 雨は屋根・外壁・開口部。新築10年以内は「雨水の浸入を防止する部分」として瑕疵担保責任の対象
  • 地面は防湿措置と基礎の高さ、配管は季節に関係なく続くのが手がかり
  • 記録するのは日付と天気・場所と範囲・温度と湿度の3項目

手に負えないカビは、お近くのカビバスターズへ

自分で試して2回落ちない、面積が広い、壁や床の内側から出ている、においが消えない――そうしたカビは、原因調査から入る専門業者の領域です。MIST工法®カビバスターズは全国に加盟店があります。まずはお近くの店舗、または本部にご相談ください。

連載「建物の構造とカビ ― 床下・壁の中・小屋裏」全31回

全体像(第1〜3回)

床下・基礎(第4〜10回)

壁の中・外壁(第11〜18回)

小屋裏・屋根(第19〜22回)

開口部・水まわり(第23〜27回)

点検と改修(第28〜31回)

参考資料(一次情報)